2002年11月04日

巨匠の小さな点

 展覧会「近代絵画の巨匠たち」が今、県立美術博物館で開かれている。
 オープンして37年。県立美術博物館で行なわれる最後の「特別企画展」です。
 報道センターで、まとまった形で紹介するため、取材させてもらった。

 特にお奨めしたいのがルノワールの「赤い服の女」。何とも言えない柔らかい女性の描き方。ルノワールの「真珠色の時代」と言われる時代の作品とのこと。真珠色とは、この時代にルノワールが描いた女性の美しい肌の色から来ているそうだ(あまりこだわりすぎると、人種差別にもつながってしまうが…)。いい加減なこともいえないのだけれど、関係者からは十ン億円という話も聞いた。

 以前、彫刻家の冨永直樹さんの作品展の取材をさせて頂いたことがある。
 まとまった形で氏のこれまでの作品を展示する企画展で、私はオープン前日、最終チェックをする冨永さんの様子など取材させてもらった。

 それまで、あまり意識して彫刻を見なかったのだけれど、よく見ると、作品の表面に、若干の白い絵の具を載せている。
 で、氏は最終チェックの際、比較的古い作品(それは猫であったと思うが)の瞳に、直径7〜8ミリの白い丸を描き入れたのだ。
 ほんの小さな点なのだけれど、作品の表情ががらりと変わり、これほどまでに違ってしまうのかと驚いた経験がある。

 で、このルノワールの作品も、よーく見ると彼女の左の眼にポチッと小さなハイライトが入っている。印象派で柔らかい筆遣いの中で、そこだけは実にシャープな色の載せ方なのです。(しかも右目には強く入っていない)

 ターナーの絵もそうなのだけれど、「全体のイメージ」を形作るのは、もちろん構成だとか色彩、タッチ。だけど、ごく小さなアクセントが入るだけでガラリと絵の印象が変わる。実に不思議なものです。