釣行報告

NO.01 ニュージーランド・北島、ノースケープ沖の巨大マダイ!

“21回目, 1年ぶりのNZ釣行”

3月中旬、ニュージーランド・北島に出掛けた。 1983年、最初にかの地を訪れてから満20年、都合21回目の“NZ釣行”である。

しかし、北島北部だけに集中してニュージーランドに出掛けていながら,未だにいっていない所、というより行けない場所がある。北島最北端の岬、ノースケープの沖合い50kmの洋上に浮かぶスリーキングス海域だ。おそらく、この海域で竿を出したことがある日本人は、未だ3ケタに届いてはいないはず。とにかく上陸不可の絶海の孤島。しかも周囲は荒海で知られ、同海域への釣行経験があるニュージーランドの友人は、「死ぬかと思ったよ。半端な波じゃなかった。もう2度と行かないっ!」と言っていた。しかし、それだけに魚影の濃さも半端ではない。30kgを超えるキングフィッシュ(ヒラマサ)やブルーノーズ(メダイ)、50kgを超えるハプーカ(アラ)とおよそ日本ではお目にかかれない巨大魚の宝庫である。

 

通常、スリーキングスには、北島北部最大の町、パイヒア(ベイオブアイランド)から、4泊5日(勿論、船中泊)の日程でなければ釣行できない。これでは1週間前後の日程で日本から出掛ける我々には到底無理。ところが、今回は、これまでにも何度か利用したことがあるアリバイ号の船長が、パイヒアよりも100km程北の町、ハウホラをベースにすることを条件に「3泊4日でスリーキングスに行ってもいい」と提案して来た。20年来の夢である。この提案に飛び付いた。早々、仲間(定員、ベッドの関係で限定6人とのこと)を集め、超ド級の大物道具を調達して意気揚々と出掛けたのである。

 

“前途 不安”

ところがである…。午後6時に成田をたち、ニュージーランド最大の町、オークランドに翌日の午前7時30分に到着。2、3本の煙草を吸っただけで、オークランド在住の友人が運転するワゴン車でハウホラに向かった。ざっと450kmの道程である。途中、船中での飲み物を調達し、道沿いのパブ?で昼食を取り、ひたすら走って、現地・ハウホラに着いたのは午後6時。成田を出て丁度24時間。ああーそれなのに、それなのに…  何と周囲の木々はザワザワと音を立てて揺れているではないか。「大丈夫、明日になれば風は止むよ」と、仲間というより、自分に言い聞かせ、早々モーテルのベッドに入った。しかし、風は止むどころかかえって強くなっていた。「ナギが絶対条件!」。渡航前にそれは厳重に言われていたことだ。これでは到底スリーキングスには行けない。

 

アリバイ号の船長は、実に気の毒そうな顔で我々を迎えてくれた。しかし、釣りにシケはつきものである。こればかりは誰のせいでもない(仲間内では、シケ男の異名をとる小生のせいだと言う声がしきりだったが… )。最初から船中泊の予定だったので、シケだからといって泊まる宿はない。スリーキングスに行けても行けなくても、その日から4日間はアリバイ号に居るしかない。船長は、「取り敢えず、北島北端に近い海域まで行って様子をみよう」と言う。明日の朝、風が止んでいればその時点でスリーキングスに向かえば、最低1日半はスリーキングスで釣りが出来ると我々を慰めた。

 

しかし、淡い期待は見事に裏切られた。ノースケープに近い入り江にイカリを入れ、出港2日目の朝を迎えたが,上空の雲は流れ、風の音は前日よりも増していた。この時点で今回のスリーキングス遠征は物理的に不可能となった。あとは、風を避けながら、この海域で竿を出すしかない。そうして迎えた3日目の朝、相変わらず風は吹き続けていたが、船長は、意を決して船を沖に向けた。2日間、3、4kgのマダイを数尾釣っただけの我々を気遣ってくれたのだろう。

“ヤッタ〜 巨大マダイ、これだからNZ釣行が止められない!”

入り江の風陰を出て1時間、沖には2〜4mの波があったが、何とか釣りにはなりそうだ。誰よりも早く、船長が竿を出した。後で判ったのだが、魚探反応の魚が何なのか自信がなかったそうだ。すると、船長の仕掛けがまだ底に着かないうちに、竿先が大きく引き込まれた。「スナッパー!」。船長が自信のある声で叫び、間もなく巨大なマダイが海面に浮いた。

 

船長の後を追って仕掛けを投入した小生の竿にもすぐにアタリが来た。餌には入り江の中で釣った25cm程のアジを付けた。竿先が締め込まれるのを待って、大きく合わせると、最近味わったことのない強烈な引き込み。リールのドラッグが悲鳴を上げ、オモリ負荷120号の剛竿が曲がった。何度もポンピングを繰り返し、やっと海面下に白っぽい魚体が見えたが、その大きさにしばしリールを巻く手が止まった。慎重にギャフを打ち込んで取り込んだが、船床に落ちる音がドサッと響いた。早速、キャビンからバネ計りを持ち出し、ぶら下げてみると、針は10kgの目盛りを越えた所で止まった。10.5kgの見事な大ダイである。小生の釣り人生で2番目(1番目は1985年にやはりニュージーランドのパイヒア沖で釣った11kg)の大きさのマダイだった。

 

そして、友人たちにも次々に大ダイがヒット。30分程の間に船長の1尾を含め、8尾の超ド級(最低7kg級、10kg級が3尾)マダイが釣り上げられた。ところが、8尾目が上がった後、急に潮の流れが速くなり、100号以上のオモリを付けても全く底まで届かなくなってしまった。結局、その後は釣りにならなくなり、再び風陰の入り江に引き揚げた。

4日目も風は治まらず、ほとんど釣りをやらずにハイホラの港に引き揚げたが、たった30分にしても、久し振りに「これぞニュージーランドの釣り!」を堪能した。

巨大マダイを釣ったポイントは、ノースケープの沖合いだが、まだまだ釣り場によっては、このクラスのマダイがウジャウジャいることが判り、嬉しくなった。念願のスリーキングス釣行は、お預けとなったが、北島最北部沿岸の美しい景色も堪能できたし、実に有意義な21回目の“NZ釣行”だった。

【メモ】

ニュージーランドの面積は日本のほぼ3分の2。人口は横浜市とほぼ同じ350万人程だ。ヨット、ボートの人口比保有数は、ダントツの世界1である。2000年、ヨットの最高峰レース『アメリカズカップ』に優勝、2連勝を飾ったが、今年スイスのチームに敗れた。また、ラグビーの『オールブラックス』も世界的に有名。通貨はNZj(1NZjは55〜70円とかなり変動する)。時差は通常3時間、サマータイム時は4時間。

 

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