競馬雑記帖

NO.37  最初で最後の春の旅打ち!?

毎年1度か2度、仲間同士で出掛ける夏か秋の“旅打ち”。メンバーは、愛すべき短気者・イソベッチ、いつも馬群の後ろの方ばかり見ている(つまり、買った馬券の馬がいつも後方を走っている!?)謎の馬券師・ナベさん、120kgの巨漢・コバブー、某スポーツ新聞の競馬担当・カトー、そして小生の5人。毎年、夏の福島競馬場に出掛け、実に楽しいひと時を過ごして来た。ところが、今回、コバブーと小生が、訳あって社を辞めることになった。そこで、カトーが「勤め先がバラバラになっちゃえば、簡単に集まって行けなくなりますよ」と、初めての“春の福島”への旅打ちを計画、競馬場の指定席等の手配をしてくれた。

 

そこで、何とか都合をつけて全員参加で春の福島競馬場(第1回福島競馬1日目、2日目)へと旅立った。小生は、仕事が終了するのが午前5時30分。一旦家に帰っていたのでは、東京駅午前7時16分の東北新幹線に間に合わない。そこで、一睡もせず、東京駅に直行、兼ねて用意(購入)のチケットを握り締め、ルンルン気分で新幹線に飛び乗った。

すでに社を辞め、一人で仕事をしているイソベッチは、住まいがある熱海から駆けつけたが、時間的に我々と同じ列車には乗れず、携帯で連絡を取りながら、福島競馬場2階で待ち合わせた。

午前9時53分、「福島1レース、1レース」と叫びながら、イソベッチが駆け込んで来た。我々4人は既に福島、中山、阪神の3競馬場の1レースの馬券は購入済み。「絶対に泡食って駆け込んでくるよ」とコバブーが言っていた通りの展開に、全員が大笑い。しかも「何でおつりが出るんだよ。ピッタリなはずなのに…ブツブツブツ」とイソベッチ。理由は狙い馬の内の1頭のマークカード塗り忘れ。しかも、その塗り忘れた1頭が先頭でゴールイン、当然、イソベッチの馬券は紙屑に−。悪いことに、大スロースターターのはずのナベさんが、1レースからガッツポーズで、イソベッチ、ますますオカンムリ。

 

何はともあれ、第一日目がスタートした。午前中は、全員が何レースかずつ的中させ、全員がほぼ豚の喧嘩(トントン)。昼食時、夏の福島なら各食堂には、長蛇の列が出来、弁当を買ってきて済ますのだが、ふと同じフロアの食堂前を見ると、長蛇の列どころか外に設置された席はガラガラ状態。そこで急遽、全員で食堂へ駆けつけた。この日は快晴、窓の外を見ると、真っ白に雪を被った安達太良連峰が美しく横たわっていた。

そうして向かえた中山9レースのミモザ賞、小生の3連単馬券が炸裂した。穴馬に狙った11頭中7番人気の11番・マイネサンサンが激走、1着でゴールして2番人気との組み合わせになる11-8の馬単配当は「228倍だぞ」と携帯サイトを覗いていたコバブーが呟いた。「やった、10万馬券だ!」と小生小躍りしてしまった。通常、馬単配当の5、6倍というのが3連単馬券配当の相場だからだ。ところが、発表された配当は何と5万7920円。11頭という頭数の少なさと、食堂がガラガラだったことから察せられる全体購入額の少なさが理由と後で察したが、その時は大穴馬券を的中させたにも拘らず、大損した気分になってしまった。

 

それでも、その日はカトーも浮いて、ナベさんとイソベッチも少々の浮き、コバブーだけが“全治1ヵ月”で飯坂の宿に向かった。

この日で3度目の同じ宿。何が気に入ったかと言えば露天風呂。カトー(この男、何故か風呂嫌い)以外は全員が3、4回ずつ露天風呂を堪能したが、翌朝“事件”が起こった。小生の10数年愛用の腕時計が腕から紛失していたのだ。とにかく前夜一睡もしていないボケボケ頭で風呂場の脱衣所に置き忘れたと思い込み(後日、宿から電話があり、小生の布団の中から出て来たと郵送して頂いた)、諦めて2日目の福島競馬に向かった。

 

ナベさんは、この日は午後から仕事、泣く泣く5レース終了時点で競馬場を後にした。残った4人は取ったり取られたりでカトーが7万ウン千円の3連単馬券を的中させたのが、唯一のハイライト。イソベッチが根気よく馬券を買って、少々浮きを堅持したのも立派だったが、小生は前日の浮きを少々溶かしたもののコバブーの無念(トータル全治2ヵ月)の分を浮かせて今回の旅打ちは終了した。

誰とはなしに、「今年は夏の北海道に行こう」。勤め先はバラバラになっても旅打ち仲間健在!そうありたいと願いながら帰路に就いた。

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