競馬雑記帖

NO.2  平成の“紀文”にならないことを祈る!

6月20日付け、サンケイスポーツ新聞一面で紹介されていた“馬券師”には、仰天である。世の中には、「馬券の天才」はいるものである。1222万×16.3=1億9918万6000円也。しかも、その1222万円は、先の安田記念での配当だというのだから恐れ入る他はない。人事ながら、不景気一色のこのご時世に、痛快な気分を味合せで戴いた。

 

「博打(馬券)で蔵を建てた者はいない」。真理である。今回の御仁がどのような人なのか、全く判らないが、紀伊国屋文左衛門と同じ最期を辿らないことをただただお祈りする。

 

小生、すでに“馬券狂”からは足を洗い、重賞レースを中心にささやかな馬券を楽しんでいる。しかし、その昔、馬券師を気取っていた頃、今では、「伝説の馬券師」と呼ぶ相応しい人に何人も会った。昭和60年代前半、目の前で千万単位の払い戻しを受ける姿を何度も目にした。馬券の購入金額が違っていた。最低が10万束で帯封付き(100万円)を2つ3つと1点に入れることも珍しくなかった。

 

それらの馬券師に共通していたことがひとつ。終日競馬場にはいるのだが、購入するレースは多くて2レース、大概は1レースだけである。小生のような馬が好きで、レースが好きで、馬さえ走っていれば、何でも買わなければ気が済まない普通の競馬好きには、到底無理な話である。

 

当時は馬単や3連複は勿論、馬連もなかった。単勝、複勝、枠連複の3つである。彼等の買う馬券は、単勝と枠連。一人だけ複勝だけしか買わない女性がいたが、彼女は毎回500万円を持って来て1点に2、300万ずつ2、3レースを買った。その払い戻し馬券は120円から130円、たまに人気薄が飛び込み150円、160円ついた時は、大騒ぎだった。それでも一日で40、50万円から100万円儲けて帰る。小生の知る限り、彼女が負けたことはない。

 

彼女以外の馬券師たちは、一人の例外もなく単勝と枠連複の本命党だった。サラリーマンには、見向きもされない単勝200円以下の本命、枠連も1000円以下の配当ばかりが彼等のターゲットだった。彼等は間違いなく馬券で飯を食っていた。複勝買いの女性を含め、彼等の消息は全く判らないが、今でも何処かの競馬場で馬券を買い続けていてほしいと思う。

 

※馬主席やそれに近い指定席で1レースで200万円、300万円と投資するファンがいることは知っているが、彼等は“馬券師”ではない。単に金持ちなだけである。我々が1000円買うところを10万円、あるいは100万円と買っているだけなのである。今回の平成の紀文さん、そうした人種ではないと思うのだが…

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