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「……! ……ム! ……スタム!! 起きろ、ロスタム!!」 体が揺すられる感覚と、聞き慣れた声が叫んでいる。
「う……? ヒューイ……?」 一見して呆れていると分かる、いつも通り魔道師のローブをまとったヒューイに言われ、 俺はのそのそと起き上がる。 「どうした? 怖い夢でも見てたのか?」 ヒューイが俺の顔を覗き込み、ローブの袖で目を拭う。 「ばっきゃろ。そんな年じゃねぇって!」 俺は一気に目が覚め、抵抗するが軽くあしらわれてヒューイにされるがままにされる。
「これで良し、と。急いで出かける用意をして来い。食事は歩きながら摂るしかないな。
食堂でサンドイッチでも作ってもらうか」 俺のパンチを笑いながらヒラリとかわし、ヒューイは塔の中へ消えていく。
「ヒューイ!! 待ちやがれ!!!」
俺は知らず知らずに部屋に誘導されてるとも知らず、ヒューイを追いかけ続けた。
「さぁ、行こうか。早くしないと本当に怒られてしまいかねないからね」
相変わらず空には分厚い雲。神に地上を見ることを許されなくなった太陽は、どうしているだろう。 「まったく。これが今生の別れってワケじゃないのにねぇ」 隣で“太陽”が笑う。
だから。俺は幸せなのだ。
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