なぜだかあたしはむりやり先生のパーカーを着せられた。
海に入るときはさすがに脱いだけど、上がった途端すばやく先生が傍にきて
念を押すようにこう言うんだよね。
「珊瑚、いいですか?くれぐれも浜辺ではこれを脱がないように」
「・・・・・・・・・ずっと?」
「当然です!」
「ねぇ・・・・わけわかんないんだけど・・・・・?」
「ちょっとした虫除けですよ」
「はぁ????」
虫??海辺にいる虫って?なにがいたっけ?
くらげ・・・・は海の中だし・・・蟹は虫じゃないよね???
そもそもこんなパーカー着てるだけで虫除けになるの?
珊瑚は相変わらず自分の容姿には無頓着であった。
弥勒にとって珊瑚の素晴らしいビキニ姿が拝めることは
至福のことであることは間違いない。断言できる。
ただ。
それは二人っきりの場合だ。
ここは大勢の海水浴客であふれかえるビーチである。
可愛い水着姿の女性が目当ての下心満載の男性も多い。
予想通り・・・というか、先ほどから珊瑚とすれ違うほとんどの男が必ず振り返るのだ。
そのたびに弥勒はそいつら全員に鋭いにらみをきかせて追い払う。
まさか自分の頭上で火花が飛び散りそうな無言の闘いが繰り広げられていようとは
当の本人ばかりが知らぬなり。
男物のパーカーを羽織ってる女に声をかけれるようなとんでもない奴は、よもやいないとは思うが。
とにかく珊瑚の水着姿を他の野郎なんぞにさらしてたまるか・・・!
一人こぶしを握り締める弥勒の決意は固かった。
「かごめちゃんたちほっといてよかったの?」
泳ぎに行こうと誘ったのだが犬夜叉が浜辺で昼寝をする、というのに
かごめはあきれながらもそんな彼に付き合って残ったのである。
「野暮なことを聞くのではありません。それに・・・・・・・」
弥勒はいつもの極上の笑みをたたえると珊瑚の耳元に囁きかけた。
「・・・・・・・俺も珊瑚と二人っきりになりたいが?・・・」
いつもこの囁きに珊瑚は弱い。
思わず思考が停止しそうになるのに慌てて身を引いた。
「ほっほらっ!ジュースでも買いにいこっ?!」
そういいながらすでに珊瑚は駆け出していた。
うまく逃げられたか・・・・
駆けてゆくその背中を見つめて弥勒も早足になっていった。
浜辺には色々な屋台が建ち並んでいた。
ちょうどお昼時・・・というのも手伝ってどこも人の長い列が出来ている。
お目当てのお店を見つけて並ぼうとしたそのとき
珊瑚の肩が一人の男の体に当たったと思うと・・・・
「いてぇっ!」
柄の悪そうな男がおおげさに声を荒げて叫んだのである。
「ごっごめんなさい!!」
「いきなりぶつかっていてぇじゃねぇかよ?」
「だから謝ってるでしょ?それにほんの少し触れただけじゃない!」
最初は素直に謝った珊瑚だが男のいいがかりには腹が立つ。
もともと気が強いのだ。
こんなことを言われて黙っていられるわけもなく。男の顔を思いっきり睨み返してやる。
男は珊瑚の体を上から下までじろじろと眺めると今度はにやりと笑った。
「ゆっくり向こうで話でもしようや?なぁべっぴんさん?」
そういいながら男の腕が珊瑚の腕を掴もうと伸ばされた。
「止めといたほうが身の為ですよ?」
弥勒の言葉が終わらないうちにその男はあっという間に関節をとられ
珊瑚に投げられて砂浜にうまっていた。
「・・・・・・・ほら、いわんこっちゃない。いつもながら見事な四方投げですねv珊瑚」
「あたし・・・・・思わず・・・大丈夫かしら?」
「あれくらいは当然でしょう?」
弥勒にとってはこれくらいで終わらせるのは心外なのだが、大勢の野次馬に囲まれたためか
当の投げられた男はいつのまにか逃げ出したようで忽然と消えていた。
あたしって・・・・・・可愛くないかも・・・・・
男を投げる女なんて誰も嫁にもらってくれないわよね・・・
弥勒が「仮」にも婚約者であることを忘れて(笑)
いらぬ心配をする珊瑚であった。
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