「ここから見るととっても綺麗だね・・・・・」
腕の中の珊瑚が外の景色を眺めながら呟いた。
ゴンドラは今ちょうど真上にさしかかろうとしている。
珊瑚の言葉に誘われて俺も窓に顔を近づけた。
暗闇のなかに街の光が煌いて宝石のようだ。
いつもは喧騒な街並みが今は幻想的でなにやら神聖なもののように感じられる。
「珊瑚のほうが綺麗だ」
俺は彼女の髪をもてあそびながら囁きかける。
「もうっ・・・美人の看護婦にでれっとしてたのは誰?」
すねたようにまたふいっと横をむくのを、笑いながら手をのばしてこちらに向かせた。
「・・・・・悪かった。そんなつもりはなかったんだが・・すまない。」
「ほんとに思ってる?」
「ほんと」
「・・・・・じゃあ許してあげる」
珊瑚が嬉しそうににっこりと微笑んだ。
あぁ・・・・・・綺麗だ・・・・・
その微笑にしばし見惚れる。
誰にもわたさない───
いつも俺の為だけに微笑んでいてほしい・・・
「ごめんね」
ふいに珊瑚が謝った。
「・・・・・・・お弁当、殺生丸先生にあげちゃって・・・」
そうだった。
今回はみすみす奴においしい思いをさせてしまった。
とりあえず珊瑚と仲直りが出来たとはいえあんなことはこの先二度とごめんだ。
それに。
「そういや・・・・昼から何も食べてないんだっけ」
「え?!うそ!ごめん!」
うろたえる珊瑚を抱き寄せて耳元に囁く。
「・・・・・・さすがにキスではお腹は膨れないからな」
「ばか・・・・・」
もう一度・・・・・顔を近づけた俺を両の手で押しのける。
「・・・・・・・・到着なんだけど」
真っ赤になりながら珊瑚が指差した先にはドアを開いて苦笑いする係員が・・・・いた。
屋敷に帰り着いてようやく珊瑚の手料理を味わうことができた。
昼のことを詫びる彼女がいつもより手をかけて作ったものは
どれもこれもこの俺の好みを熟知したもので涙が出るほどうまい。
二度と殺生丸には食わせるものか!
密かに心に誓った。
「どうかな?今日の料理。初めてのものもあったんだけど」
食後のお茶を差し出しながら、珊瑚が問いかけてきた。
「おいしかったですよ。珊瑚はいい奥さんになれます」
「////おだててももうなにもでないよ」
「いえ真剣に私はしあわせものだなぁ・・・・とv」
可愛らしく頬を染める彼女の手をとろうとのばしかけたそのとき
琥珀が瞳をきらきら輝かせて飛び込んできて一言───
「姉さん!!お風呂まだだよね?久しぶりに一緒に入ろうよ」
なっに〜〜〜〜〜〜〜〜っ?!!!
思わず手から湯のみがずり落ちそうになるのをなんとかもちこたえる。
「あぁすぐ行くから。背中流してあげるから待ってて」
さも当然とばかりに珊瑚が答えた。
「・・・・・・・・・あの・・・・珊瑚?まさか本当に一緒に?」
「うん、そうだけど?最近時間があわなくて入ってなかったけど・・・」
呆然としている俺にかまわず珊瑚がにこやかに追い討ちをかけた。
「いつも体の洗いっこしてるんだ。久しぶりだから念入りにしてやらないとね」
念入り・・・・・体・・・・・・想像すると眩暈がしそうだ・・・
「それでは私も一緒に・・・・」
「・・・・・・・・・殴られたい?」
「・・・・・・・・・・・遠慮します」
いそいそと琥珀のあとを追って風呂に向かう珊瑚を複雑な心境で見つめながら呟く。
「・・・・・・・・子供にゃ刺激強すぎるぞ・・・・・・」
どこまでも天然なあの姉弟にはそんな心配は無用だということを忘れている弥勒だった。
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