お互い言葉がみつからないまま沈黙の時間が流れていく。
珊瑚の表情は夕日の燃える赤い色に照らされてよく見えない。
「・・・・・・・・・珊瑚」
重かった俺の口がようやく開いてその名を呼んだ。
「・・・・・・・・・・・・」
返事は返ってこない。
いまだ彼女は沈黙のまま。
この空気を断ち切るべく俺は一歩足を踏み出した。
「・・・・・・ほっといてくれればよかったのに・・・・」
珊瑚がぽつりと呟いた。
「どうせ・・・・あたしは先生にとってたいした存在じゃないんだから・・・」
あくまでも頑なな珊瑚のその言葉を聞いて、さすがにこの俺も少々腹が立ってきた。
確かに悪いのは俺だ。
しかし・・・・・・・・
「・・・・では珊瑚にとって私はどんな存在なのですか・・・?」
今度はこちらから問い掛ける。
俺の声音が変わったことに気が付いたのだろう。
珊瑚がはっと息を呑んだ。
「・・・・・・取るに足らない存在なのか?」
「そんなことっ!・・・・」
怒っていたはずの珊瑚の顔が悲痛に歪む。
我ながら意地の悪い・・・・
己の素行のせいで珊瑚を怒らせたくせに、あまりにもな恋人の言葉にいじめてみたくなる。
でも・・・・やはりこのへんで素直にあやまらないと・・・
───やばいよな
もうとう珊瑚を泣かすつもりなぞないのだ。
本当はすぐに謝って抱きしめて・・・・微笑んでほしい。
今にも泣きそうな珊瑚に近づくと、引きずるようにしてバイクの後部シートに座らせる。
「!!!ちょっ・・・なにするの?!」
「・・・・・・・・・・いいから黙ってつかまってろ」
もう抵抗しても無駄だと悟ったのか珊瑚は何も言わず俺の体に腕を絡ませてきた。
いつもの彼女の体温を背中に感じてバイクを走らせる。
それだけで俺は・・・・・・安心する。
背中から暖かな何かが流れ込むような・・・・・
何ものにも代えがたい彼女のぬくもり。
まったく・・・・たいした存在だな・・・お前は
思わず漏れる笑みに珊瑚が気づくはずもなく。
風を切ってバイクが走り抜ける。
夕焼けはあっという間に消え去りすでにあたりは暗くなっていた───
「着きましたよ」
「・・・・・・・・・・ここは・・・・・・・・・」
俺たちは今、最近出来たばかりのアミューズメント施設にきていた。
港の開発事業の一部とかでショッピングセンターやら遊園地やらが
ここ数ヶ月の間に立て続けにできた新たなデートスポットだ。
とりわけここの観覧車は大きさが売りの為、オープンしたばかりだが人気が高い。
夏季は夜遅くまで営業していることもあってカップルだらけだろう。
「・・・・・・乗ります」
「え???????」
あっけに取られている珊瑚の手を引いて俺たちは観覧車に乗り込んだ。
ゴンドラがゆっくりと上昇してゆく。
俺と向かい合わせで珊瑚が座っていた。
「・・・・・・・普通隣に座りません?婚約者なんですし」
「・・・・・・・いい」
さも残念そうな俺の言葉にも反応が冷たい。
おおげさにため息をついてみせた後、ひょい、と隣に移動する。
そのはずみでゴンドラがゆらりと大きく傾いだ。
「きゃっ?!!!あぶな・・・・」
すでに珊瑚の唇は俺のそれに塞がれていた。
びくりと震えた彼女の体はわずかに抵抗をみせたが
やがてすべての力を抜いて体を預けてくる。
俺は・・・いつもこの唇に触れていたい・・と思う。
甘くてやわらかな彼女のそれはまるで麻薬のようだ。
ようやく唇を解放してやる頃には、俺の腕の中でぐったりと放心状態だった。
「・・・・・・・・これで許してもらえますか?」
「・・・・・・・・ずるいよ・・・・・」
潤んだ瞳で見つめる珊瑚をもう一度抱きしめて囁く。
「・・・・・・許してもらえるまで・・・・何度でも・・・」
「・・・・・・・あ・・・・・・・」
俺と珊瑚の唇がまたゆっくりと重なり合う。
この瞬間が永遠であってほしい・・・・・と願いながら・・・・・・
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