弥勒先生の華麗なる一日:其の3



午後からの仕事は散々だった。
どこにでもわがままな患者はいる。
今担当しているどっかの金持ちのお嬢様だかなんだか知らないが
今日も忙しくて他のやつにまかせていたその患者が俺じゃなきゃいやだ!
とだだをこねていたらしい。
珊瑚を怒らせ、こいつのおかげで昼飯まで食いっぱぐれて・・・



「弥勒先生っっ!!私をほってどこいってたのよ?!」
「申し訳ないですが・・・忙しくて。」



とりあえず笑顔で対応してやりその場を治める。
例え心の中では舌打ちしていても・・・・だ(笑)
俺は基本的に女性にはフェミニストなんだな。
そのかわりこいつが野郎だったら今ごろは情け容赦のないリハビリで
痛い目にあわすところなんだが。



とにかく自分勝手で俺を呼びつける。
必要以上にべたべたとくっついてくるのは閉口もんだ。
顔はまぁ綺麗・・・な部類なんだろうが・・・
こういった女性は今に始まったことじゃないし扱い方も心得ているつもりだ。
しかし。




・・・・・・・・かんべんしてくれ・・・・・



これが今の俺の本音だった。
合間を縫って珊瑚の携帯に電話をいれてはいるものの、電源を切っていのか繋がらない。
今回ばかりは真剣に怒っているようだ。
初めての・・・・喧嘩になるのか。





───落ち着かない





珊瑚の声が聞きたい。
その体を強く抱きしめたい。
怒っているのならいくらでも謝ろう。
いつでも俺にはお前だけなのだと
何度でも囁こう。

だからその笑顔をまた俺に向けてくれ・・・・・・

わがままお嬢の相手も早々に定時になると同時に病院を飛び出す。
途中、一番会いたくない殺生丸先生に出くわした。

いつもながら表情もかえず淡々としている殺生丸。
外科医としては尊敬こそすれ、
珊瑚のことでは認めたくないがライバルでもある奴は、油断のならない男の一人だった。
そのやつが、俺を見つけるとぽつりともらした。



「・・・・・・・珊瑚は料理がうまいのだな・・・・・・」




ぴきっ





あれを食ったのか・・・・・?

「今回は不可抗力でこうなりましたが・・・・・・」
動揺を鎮めて、俺は真剣な面持ちで殺生丸に向き直る。



「珊瑚は渡しません。例えそれがあなたであってもね」



「・・・・・・・彼女にあんな顔をさせるな・・・それだけだ」
宣戦布告な俺の言葉に顔色も変えず、殺生丸が痛いところをついてきた。
同じ女性を愛するだけあって奴の言葉は俺の胸に突き刺さる。
確かに奴なら彼女を悲しませたりしないのだろう。
それは俺だって同じだ。
いつでも珊瑚には笑っていて欲しい。

自分の傍でいつも・・・・・・・・・・



「言われなくともわかってます」



あくまでも平然としている殺生丸に言い切って、俺はくるりと背中を向けた。
珊瑚の笑顔を取り戻すまではどうも分が悪い。
むろん奴に渡す気などこれっぽっちもない。
ただその愛しい姿を見るまでは・・・・

俺は足早にその場から立ち去った。





迎えにくるな、と言われて素直に聞けるわけないじゃないか・・・・





いつものごとく彼女の学校へとバイクを飛ばす。
聞きなれたバイクのエンジン音がなぜか空しく響いている。

弥勒はひときわ高くバイクのエンジンを鳴らすとスピードを上げた。










珊瑚の笑顔を取り戻すために────



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