珊瑚の家の朝は早い。
屋敷の敷地内にある合気道道場での早朝稽古の為だ。
門下生が老若男女問わず何人か集まってくる。
いや、圧倒的に若い野郎が多い。
・・・・・・・・珊瑚目当ての命知らずの野郎どもが。
そう、確かに純粋に合気道の道を極めたいと思う輩もいるのだが
どう見ても稽古にかこつけて少しでも彼女の傍にいようとしていることが
ありありとわかる不届き者もいるのだ。
合気道には筋力など必要としない。
いわゆる「気」の武道であり、
相手の力をうまく利用してタイミングと合理的な動きで相手を制する武道である。
足技・寝技は存在せず、あるのは手技のみ。
合気道の間合いは手刀であり、組み手はなくすべての技が離れた状態で発動する。
だから手合わせも男女でわける必要もなく、男だろうが女だろうが稽古は自由だ。
自由なんだが・・・・・・・・
「弥勒指導員!ぜひご指導をお願いいたします!vv」
「あのっvvわたしも・・・・・!」
「その次は私も型の指導をしていただきたいですvv」
これは俺の周りのうら若き女性門下生の声。
そして・・・・・
「珊瑚さんっっ!今日はなんの型を教えていただけるんですか?!」
「お前〜〜昨日教えてもらったのを一人で稽古するもんだ!
俺はどうも間の取り方がいまいちで・・・」
「お前こそっ!そんなことは初歩の初歩だぁ!!おとといきやがれっ!」
「・・・・こんなやつらはほっといてぜひ私と手合わせ願いますvv」
いつもながら懲りない野郎どもがわらわらと群がっていた。
俺の周りはともかく(笑)珊瑚にまとわりつくあいつらは排除せねば!
「いいですよ。順番にお相手いたしますから、一人ずつきてくださいね。」
珊瑚はそんな不埒なやつらにもいつもの微笑みを投げかける。
花の咲いたような珊瑚の微笑みにみな骨抜きにされちまうんだな、これが。
そいつらに見せるのはいささかもったいなく不満だが
そのあとの地獄の稽古を思えばまぁつかの間の天国・・というところだろう。
なぜなら手合わせでは珊瑚にほとんど触れることなく投げられてしまうのだ。
あっという間に関節をとられたかと思うとその体は次の瞬間宙を舞う。
そうして何度か投げられてへとへとになったころあいを見計らって
「今度はこの私がみっちり型を教え込んで差し上げましょう・・・・・」
これ以上はないくらいのにこやかな笑みをたたえた俺をみる奴らの顔は・・・・・・
引きつっていた。
可愛い弟子たちにありがたい稽古をつけてやり
さてvこんどは自分が珊瑚と手合わせを・・・と思っていると。
「姉さん!今度は僕だよ!!」
「琥珀!いいよvいくらでも相手してあげるからかかっておいでv」
琥珀。珊瑚の溺愛する弟。
・・・・・・・・・・こいつが一番の強敵なんだよな・・・・・
人懐っこくてこの俺のことも慕ってくれてる未来の可愛い義弟だ(笑)
たださすが珊瑚の弟、輪をかけたような天然ぶりで
俺と珊瑚の仲を思いっきり「邪魔」をしてくれる。
悪気はないんだよな・・・・悪気は・・・・・はぁ・・・・・
楽しそうに手合わせをする微笑ましい姉と弟を恨めしげに見つめる弥勒は
今朝もまた、大きくため息をつくのであった。
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