珊瑚の憂鬱な病院ライフ:2



毎日の単調な入院生活。そして毎日繰り返されるあの時間。
憂鬱だったはずの時間はいつしかあたしにとって・・・・・・。






「え?先生いないの?」
「ええ、講習会だとかで午後のリハビリにいかれないとおっしゃってましたよ」
いつもの白衣の彼女が体温計を受け取りながら言った。




なんだ・・・・いないのかぁ・・・・。

よほどがっかりした顔をしてしまったのだろう。
慰めるようにあたしに言葉をかける。
「大丈夫よ、すぐ戻るらしいから。それに・・・・・」
そこまで言ってあたしの顔をちらりと意味ありげに見つめると
「用事がなくてもいつものようにここには来ますからv」
「なっ!そ・・そんな!あたしは別に・・・・・///」
自分でも真っ赤になったのがわかった。
どうしよう・・変に思われた?
だが、それを見て彼女は満足げに微笑むと何も言わずに立ち去っていった。



なんか見透かされてる・・・・?



思いっきりあせりまくっている珊瑚にむかってさらに追い討ちをかけるように
同室のかごめがにこやかに言い放つ。
「ほんと弥勒先生って珊瑚ちゃん好きだよね〜vv」
「かっかごめちゃんまで?!」
同い年だが自分とは性格も正反対で明るくてしっかりしたかごめは
入院してからの親友だった。
そんな彼女はなにかとこの恋にうとい珊瑚のことを気にかけていた。
(珊瑚ちゃんってばほんとに弥勒先生の気持に気づいてないの?
これじゃ弥勒先生も大変ね・・・・・・)
しどろもどろに真っ赤になってうつむいたいまだ目覚めてない親友を見つめると
かごめは大きなため息をついた。





その日の午後、珊瑚は一人でリハビリ室にいた。
違う先生をつけようかと薦められたが、そんな気分にならず適当に理由をつけて
断ってきたのだ。
時間も遅めだったからか部屋には他の患者は見当たらない。
この方がゆっくりできる。
寂しい気持をむりやりに押し込んで自分に言い聞かせた。



いつもと違いたった一人のリハビリは実際メニューをこなすには笑えるくらい効率がよく
効果的だった。
それは身体的には・・・ということで、今の珊瑚の精神的にはあまりよくないらしい。
そんな気持を静めるようにもくもくと歩行を繰り返す。



暫くするとドアが開いて、一人の若い男が部屋に入ってきた。
ちらりとその姿に視線を走らせるが、珊瑚には面識がない。
その男は珊瑚を見つけると一瞬びっくりした様子をみせたがすぐに何も無かったかのように
リハビリを始めだしたので珊瑚も気にもとめずにいたのだが・・・・・
その後ろ手でドアのカギが小さくカチャリと音を立てたことを彼女は気づく由も無く。





一方弥勒は・・・・・。
「ちっ遅くなったな・・・今さら講習会なんざ出るんじゃねぇな」
いつもの穏やかな口調とはおよそかけはなれた本来の彼の素の言葉使いでつぶやいた。
普段の彼だけを知っている者が聞いたらそのあまりのギャップに驚くであろう。
「せっかくの珊瑚との時間がへっちまう」
講習会もそこそこにようやく病院に帰り着いた弥勒は、まだ今日は一度も
顔をみていないことに不満を感じながら、その愛しい面影をもとめて足早に病室に向かう。



・・・・そうとうイカれてるな・・・・・



笑みが自然にこぼれるのをおさえながら弥勒は病室をノックした。



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