あたしの名は珊瑚。女子高生である。
半月ほど前にどじ踏んで足を骨折してしまい、現在入院リハビリ中なのだが・・・。
足の骨は順調に治りつつあるし(人よりも骨のつきはいいらしい)
歩くことも松葉杖の使い方もうまくなって不自由はしなくなっている。
本来なら退屈ながらも有意義な時間がすごせるはずの入院生活。
なのに・・・・・・・・
・・・・・・・・はぁ・・・・・今日はこれで何回目のため息だろう?
「珊瑚さんvリハビリのお時間ですよ〜」
もうすっかり顔なじみになった担当の看護婦さんがにっこりと微笑んだ。
「・・・もう?そんな時間?・・・・はぁ・・・」
思いっきり沈んだ顔をしたあたしに、彼女は動じることなく尚も続けた。
「もうそこまで弥勒先生迎えにいらしてますけど?」
そういい終わらないうちに「弥勒先生」は病室のドアからひょっこりとその顔を覗かせた。
「珊瑚君?そろそろいつもの時間なんですがv」
眼鏡の奥の瞳がにっこりとやさしく微笑む。
・・・・・あたしはこのとびっきりの笑顔をされるとなぜだか訳も無く胸の鼓動がいたずらに
早鐘をうち体温が確実に2度ほど上昇するのだ。
しかしこの「弥勒先生」どうも女好きらしくきれいな看護婦さんから患者さんまで
手当たり次第に声かけて歩いているような(病院中の女性と知り合いなんじゃないかと思うくらい)
とんでもないすけべ医師なのだ。
確かに端正な顔立ちだし物腰も柔らかいから女性の方が放っておかないのもあるのだけど。
あたし・・・・どうしちゃったんだろう・・・・?
17にしては恋だの愛だのには疎くて幼い珊瑚にとってこの今の自分の感情は理解しがたく
掴みきれないものであった。
「・・・珊瑚君?」
赤い顔をしたまま黙り込んでしまった珊瑚を弥勒は己の顔を近づけて心配そうに覗き込んだ。
「!!!!!」
ふいに耳元で囁かれてしまった珊瑚の心臓はそれこそ口から飛び出るかと思うほど
跳ね上がり声もでない。
(心臓とまるかと思った・・・・・なんてことしてくれるのさこの先生は・・・?!)
いわれのない罵倒を心の中でされる弥勒にとってはただのいいがかりである。
「さて、今日もがんばりましょう」
リハビリ室でいつものメニュー表をとりだし珊瑚をイスに座らせた。
「もっ・・・もうずい分松葉杖も使えるしあとは歩く練習だろ?
だ・・・・・だったら自分ひとりでもできるし・・・・・・」
自分は何を言っているのか。
本当は先生に居て欲しいくせに・・・・居て欲しいけどそばにいるとどうしていいかわからない。
いや本当はわかっているのだこの感情の名を。
「・・・・・やれやれ・・・珊瑚君、リハビリはきちんとしておかないと大変なんですよ。
まぁ毎日単調だしつらいことだとは思いますがね。」
弥勒はだだっこをあやすように珊瑚の頭をなぜながら言った。
「こっこども扱いしないでよっ!!」
勢いよくその手を払いのけようとした細い両の手を弥勒はなんなく捕まえるとその耳元に囁いた。
「子供だとは思ってないですが・・・そうですね、リハビリをがんばれるおまじないを
して差し上げましょうか?」
「・・・・・え?」
何を・・・・という前にその唇に暖かいものが触れた。
それはほんの一瞬で珊瑚がそれと気づくのにしばらくかかるほどのやさしい口付けだった。
「・・・・・どうですか?やる気でてきたでしょうv」
何がおこったのかわけがわからず放心していた珊瑚は悪戯っぽく笑う勒の笑顔をみて
はっと我に返った。
「・・・なっ・・・・なにすんのよ〜〜〜〜!すけべ医者がぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!」
すっぱ〜〜〜〜ん!!
リハビリ室に今日も(笑)小気味よい音が響きわたる。
こうして珊瑚の憂鬱(?)な病院ライフは続くのであった。
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