競馬雑記帖

NO.8  静岡・下田で世界的なビルフィッシュトーナメント開催

“ジャパン・インターナショナル・ビルフィッシュ・トーナメント(JIBT)”をご存知だろうか。“ビルフィッシュ”とは、角のある魚、カジキのことである。つまり『JIBT』とは、カジキを対象にしたトローリング大会である。この種の大会は、世界各地で行われているが、今年で25回目を迎えた『JIBT』は、今年も静岡・下田港をベースに7月17日から20日まで開催される。日本でもよく知られているハワイ・コナ(ハワイ島)で行われる『HIBT』(ハワイアン・インターナショナル・ビルフィッシュ・トーナメント)に並ぶ世界でも有数のビルフィッシュトーナメントである。例年、チャーターボートを含め、100隻を超える船とチームが参加、海外からのエントリーも少なくない。

その年によってムラはあるものの『JIBT』では、毎回のように20本、30本のカジキが釣り上げられたり、タグ&リリースされたりしている。これは、世界的に見ても大変なこと。どこのビルフィッシュトーナメントでも二桁のカジキが釣り上げられることは滅多にないのだ。トーナメントの舞台になる伊豆諸島周辺には、それだけカジキが居るということ。日本を取り巻く海は、世界に冠たる豊饒の海なのである。

 

世界的に見ても超A級の釣り場で開催される『JIBT』。しかし、四半世紀を経過する歴史を積み上げながら、肝心な国内での知名度は一向に上がってこない。『JIBT』が、『HIBT』に指摘する国際的なビルフィッシュトーナメントである事実を知っているのは、ほんの僅かな人達だけなのだ。

 

『JIBT』は、『JGFA』(日本ゲームフィッシュ協会=岡田順三会長)によって運営、管理されている。『JGFA』とは、世界的な“釣り人組織”である『IGFA』(国際ゲームフィッシュ協会=マイケル・J・レビット会長)に加盟する日本ゲームフィッシングを総括する我が国唯一の組織である。1979年に60人余りの会員でスタートし、今年で25年周年を迎える。現在、会員は約5000人。世界の“GFA”の中でも最大規模を誇る組織になっている。それなのに何故『JIBT』イヤ、『JGFA』自体の知名度が上がらないのだろうか。

 

『JGFA』は、トローリングの組織という認識の人が圧倒的に多い。しかし、実際には『IGFA』ルールに則って、日本記録や世界記録の承認や管理をすると共に、釣りをゲーム、スポーツとして発展させるための活動をしている団体である。特にここ数年は、従来の『IGFA』ルールとは別に、我が国独特の基準を設けたオールタックルでの日本記録の承認、管理などにも積極的に取り組んでいる。

 

現会長の岡田順三氏は、日本人として初の1000ポンドオーバーのカジキ(オーストラリア)を釣り上げたことで知られているが、現在では、トローリングよりもシーバスやアジやサバ、メバルなどの釣りに熱心である。「『JGFA』は、決してトローリングだけの組織ではありません。釣りをゲームとして楽しむためにはどうするか−をテーマに活動を続けてきたつもりです。最近では“バッグリミット”の普及を目指して頑張っています」と岡田さん。バッグリミットとは、釣り上げる魚の数に制限を設けるということ。外国では当たり前に行われていることだ。

 

しかし、岡田さんたちの努力はなかなか実を結ばない。『JGFA』発足と同時に第1回の『JIBT』(東京・三宅島で開催)が開催されたこともあり、『JGFA』イコール、「カジキ釣り」のイメージが定着してしまったのも大きな原因になっているように思う。現在でもそうだが、トローリングは自前の道具でやろうと思えば、非常に金がかかる。

ボートは釣り船などをチャーターすれば済むが、ロッド、リール、ライン、そして使用するルアー、その全てが高い。道具は30ポンドクラスから130ポンドクラスまで大きく分ければ4つのクラスに分類できるが、最もライトなタックルでも全て揃えれば数十万円が必要になる。とてもサラリーマンに出来る釣りではない。したがって、『JGFA』イコール、「金持ちの集まり」といった印象も広まってしまったのだろう。おまけに“IGFAルール”に則りというのが、基本にあるため、どうしても英語表記が多くなる。先程の岡田さんの話でも“制限尾数”ではなく“バッグリミット”と表現する。そうしたことが重なり合って、未だに『JGFA』も『JIBT』も広く“市民権”を得られない−というのが、真実なのだろう。

 

しかし、今後の日本の釣りを考えれば、『JGFA』には大きな役割を果たしてもらいたい。遊びの要素が高い西洋諸国と違い、我が国では、海釣りは“おかず”をとるための手段として始められたという経緯がある。そのため、これをゲームとしてあるいはスポーツとして楽しむようになるには、かなりの時間がかかるのは当たり前なのである。

 

今、日本の釣りも徐々にではあるが、「魚をとる」から「魚と遊ぶ」に変わりつつある。日本記録、あるいは世界記録の魚を釣る−ということは、大きな魅力になるはずだ。そのためにも『JGFA』には、”広報活動”を今以上に積極的にやってほしい。世界のトローリングファンに知られている『JIBT』が、国内ではほんのひと握りの人にしか知られていないのも広報活動が足りないためではないだろうか。多くの釣り人が、『JGFA』の活動に関心をもつようになれば、資金面も含め、今後はもっと有効な働きが出来るようになると思う。

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