競馬雑記帖

NO.32  馬体重に惑わされることなかれ!

いよいよ秋競馬がスタートした。秋の重賞戦線に向けて夏休みに入っていた実力馬たちが始動。菊花賞に向けセントライト記念にもダービーの4着馬(アドマイヤフジ)、5着馬(マイネルレコルト)が出走してきた。アドマイヤフジの馬体重は、前走時比プラス18kg、担当調教師の談話には「重め残りはない」と出ていたが、明らかに余裕のある体つきだった。それが影響したのかどうかは明らかではないが、前半、全くついて行けず、最後は猛然と追い込んではきたものの4着に入るのが精一杯だった。

 

このアドマイヤフジのように、この時期は、4、5ヶ月の休み明けの馬たちが沢山登場してくる。プラス18kg、20kg、中には30kg以上も増えて出てくる馬もいる。6kg、8kg程度ならそれ程気にする人はいないが、2ケタの馬体重増となると、「まだ重い」と考える人が圧倒的に多い。

 

しかし、ちょっと冷静に考えて戴きたい。サラブレッドは、小柄な馬でも420、430kg、大きな馬は優に500kgを超える。人間(日本人)の平均的な体重は、女が50kg前後、男が65kg前後と考えれば、優に7倍以上の体重なのだ。したがって、単純に考えれば7kg(JRAでは馬体重を2kg単位で表示しているので、7kgという表示は前走が地方競馬=1kg単位=出走馬以外はないが)増えていても人間に直せば1kg増えただけということになる。したがって、仮に20kg増でも人間に換算すれば、3kg前後増えたに過ぎない。アスリートが3kg増えるのは、大変なことかもしれないが、全く能力を発揮できない程ではないはずだ。

 

サラブレッドは、デリケートな動物の上、個体差も相当あるので、一概には言えないが、10kg程度までの増減は、あまり気にする必要はない。アドマイヤフジのプラス18kgをどう捉えるかは微妙なところだが、結果としては少し重かったのかも知れない。しかし、20kg以上の馬体重増にもかかわらず、完勝してしまう馬も少なくない。サラブレッドの馬体重は“額面”通りに受け取らない方が賢明だ。ただし、休み明けの大幅な馬体重減は、要注意。極限にまで鍛えられているサラブレッド、休んでいれば体重は増えるのが当たり前で、稽古(調教)だけでは、ベスト体重を維持するのは不可能に近い。にもかかわらず体重が減って出てくるということは、体調に問題がある−と考えた方がいいだろう。

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