競馬雑記帖

NO.13  サラブレッドは自分の“身分”を知っている!

小生の友人に競馬記者暦30ウン年というとてつもなく博才に優れた男がいる。某スポーツ新聞“本紙予想担当”の“最長記録”を更新中の男である。その彼が、ある時「かいぎゅう〜、馬ってーのは、自分の“身分”をちゃんと知っているんだよ」。独特の秋田弁なまりでそう言った。何でもトレセンや厩舎の周りで向こうからオープン馬が歩いてくると、未勝利馬や条件馬が道を空けるのだそうだ。「ふーん」。聞いた当初は、正直言って「そんなバカな」と思った。レースの時に勝った馬が誇らしげに引き揚げてくる場面は、何度も目撃しているが、それはそのときだけのもの−馬自身が、今、何勝しているかなど分かるわけがない−そう思ったのである。

 

そこで、JRAの獣医をやっている友人にある時、そのことを聞いてみた。答えは何と「彼のいう通り」と言うものだった。全ての馬がそうではないらしいが、誰もが名前を知っているようなオープン馬は、「自分は偉い」とちゃんと分かっており、そのことが態度にも現れ、それが他馬を威圧するようなことは実際にあるそうだ。

 

多少“科学的”に分析するならば、それは馬を扱う人間サイドの態度と無関係ではないらしい。走る度に高額な賞金を咥えてくる馬とカイバ代(餌代)も満足に稼がない馬の扱いは当然違ってくるのは致し方あるまい。その積重ねが、他馬に対する優越感として現れる−ということなのだろう。馬の世界も“金が全て”とは…。

 

    

それともうひとつ。調教師や厩務員が、スポーツ新聞の談話でよく言っている「この馬は競馬が近付くとそれが分かっていて自分で体を作る」と言う話もどうやらある程度本当らしい。競馬が近付くと、ほとんどの馬は、追い切り(調教)を強くしていく。それで馬が分かるということらしい。しかし、これは、かなりの“個体差”があり、名馬が必ずしもそうではないと言うのが、面白かった。

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