競馬雑記帖

NO.8  穴党か本命党か、心は千々に乱れる

一口に競馬ファンといっても様々な人がいる。大穴狙い専門で知られる某スポーツ新聞のS記者やM記者を始め、世の競馬ファンは、大半が穴予想を好む。

しかし、小生、このご両人(ともに齢還暦前後)をよくご存じ上げているが、よくぞこの歳まで生き延びてこられたものだと感心するくらい年中ピーピーしている。当たった時は、派手に書きたてられるので、しょっちゅう大金を手にしていると勘違いなさっている彼等のファンも多いようだが、現実は相当厳しい。

穴馬券は“専門家”とも言えども早々当たるものではないのである。冷静に分析するならば、穴党よりも本命党の方が“いい思い”をする確率は数段高い。

非常に簡単な算数である。競馬(競輪、競艇、オートレースも同じ)の配当値は、人気馬が上位にくる確率に反比例するのである。配当が高ければ、その馬が上位にくる確率は低く、逆に配当が低ければ、その馬が上位にくる確率は高くなるのは、まさに自然の摂理なのである。

 

過去の何万レース(レース数が多くなればなるほど)を対象に調べても、1番人気の馬が優勝、または2、3着に来る確率は、2番人気以下の馬が上位に来る確率を下回ることは決してないのだ。

500円の配当の馬券なら1、2点で的中させることは可能だが、5000円の馬券を当てるには、少なくとも5、6点、時には10点以上の馬券が必要になる。確率論から言えば、配当500円の馬券と5000円の馬券では、出現率、的中率は10対1、1対10分の1になり、明らかに配当500円の馬券を狙った方が得策である。

仮に1000円の元手で配当500円の馬券を1点買えば、配当は5000円になり、配当5000円の馬券を10点の均等買いにした場合は、配当5000円の馬券が的中しても配当はやはり5000円でしかないのである。リスクはどちらが高いかと言えば、出現率を考えれば明白なように配当5000円馬券であるのはいうまでもない。

したがって、上位人気(1−3番人気)を中心にした馬券(馬単、馬連、3連複)を購入し続ければ大損することはなく、かなりの確率で的中馬券を手にすることが出来るはずだ。

 

しかし、しかしである。実際には、先に紹介したように競馬ファンは、ハイリスク・ハイリターン(実際はハイリスク・セームリターンなのだが…)を求める。理由は非常に簡単である。一般の競馬ファンは、競馬に大金を投じることが出来ないからだ。例え300円、400円の配当でも1点に1万円も2万円も買うことが出来るなら数万円の配当を簡単に手に出来る。しかし、1レース2000、3000円(それでも20数レースが購入できる現在では、全て外れれば一日4、5万円を失う)しか購入出来ない一般のファンには、的中しても3000円、4000円にしかならない本命馬券は魅力的ではないのだ。

つまり、そこには算数の世界では割り切れない要素が絡み合うのである。小生は、数学大好き人間、したがって基本的には本命党である。しかし、実際に競馬場に出掛け、3レース、4レースと外れ続け、資金の余裕がなくなれば、ハイリスクを承知で穴馬券に手を出している。

 

統計、つまり、データは、あくまで平均値を基本に割り出したものである。「1番人気の出現率が、決して2番人気以下のそれを下回らない−」というのも数十、数百とレースが重なればの話であり、特定の一日だけ見れば、1番人気が全く上位に来ない日もあるのだ。

競馬ファンは、「今日は荒れそうだ」とか「今日は本命党の日だ」といった話をよくするが、実際にそういう日が確かにあるのだからやっかいなのだ。

 

結論としては、競馬(実際は博打全般)は、やらない人が最も賢明ということだ。「そんなことは、言われなくとも分かってら!」と言うなかれ。賢明なる結論とは、常に分かり切っているものなのだ。

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