黄金のライオン編
(初出 1966年)
ま、割とどうでもいい話です。しかし、このどうでもいいエピソード中でピュンマさんは家族皆殺しの憂き目にあってしまいます。ひどいです。家族といえばフランソワーズは、他の野郎共と違って幸せに育った普通の娘さんで、拉致・改造により一転して不幸のどん底に落とされ、家族(といっても、ジャン兄以外の家族の影はないのだが)から引き離されてしまったということで、9人の中でもかなりカワイソウな人だとされていますが、実はピュンマさんにも家族がいたのでした。しかし、「黄金のライオン編」がマイナーなので、この事実

は心にとめられることなく流されてしまうのです。少なくとも、私は忘れていました、きれいさっぱり。このあたりが、いかにもピュンマさん。
しかも、この話には、それ以上に気になるポイントがあって(すまん)、それは……後で書きます。
冒頭、「子どものころ、ぼくはアフリカにあこがれていた」と言うジョーに対し、フランソワーズもピュンマも「まあ、ジョーったら、いまはおとなみたいなこといってるわ」「ほんとだぜ、009」と返しています。そうか、ジョー、まだ大人じゃないんだ。確かに見た目、かなり子供っぽいけどな。いったい何歳なんでしょ、この頃。

若酋長(よい響きだ)ピュンマさんは独立運動のリーダー。すごいな。彼はお子様ジョーよりは年上なんだろうな。ま、ともかく、その独立運動の妨げになっているのが、ナゾの黄金のライオン。マッハで動き、口から火を吐き、どうやら知力もあるという。こいつが暴れるために、住民が怖がって団結がくずれるし、ピュンマの家族も殺されてしまうし(妹までいたのだよ)……。ということで、少年探偵島村くんは、このライオンの影には独立を妨げようとするE国(イギリスだね)の人間がからんでいると推理するのです。
少年探偵島村、冴えています。発狂したという原住民の目を見ただけで、狂ったフリをしている正常人だと見破ります。そして、「黄金のライオン」と謎の「黄金の木」の正体まであっさり見破ってしまい、ライオンを岩場に閉じ込めただけで「これで一巻の終わりさ」と断言してしまうのですが……。
はたして一ヶ月後、パリ観光中の島村君とフランの所にピュンマから手紙が来ます。「だいじょうぶでした。一ヶ月後、岩をのぞいて中へはいってみますとライオンは死んでいました。黄金の木も二十日後には枯れました。」 わけがわからないというフランソワーズに、島村くんは言います。「なあに、かんたんさ。やつらは宇宙生命だったんだ」 …………あのぅ、すいません、わからないんですけど。

ということで、宇宙生命体のことは、わけわからないのでどうでもよいのですが、それより気になるのは、島村くんとフランちゃんが、どうも二人っきりでパリにいるみたいなんですよ。これって、どういうことなんでしょう。ライオン退治してからフランスに渡って、それから一ヶ月ずっと二人で過ごしていたのでしょうか。島村くん、どこに泊まってたんだろう。ひょっとして、フランちゃんのとこでしょうか。むむ、子供のくせに。
ま、そのあたりの事情はよくわからんのだが、ともかく、二人はパリでデートしてます。肩に手まわってます。腕組んでます。まったく、子供のくせに(しつこい)。まだ家族を失った心の傷も癒えていないだろうピュンマさんの「どうぞ、ゆっくりパリ見物を」の言葉が切ない「黄金のライオン編」でした。