Walk along the shore
by: 繭 様 (mayudama






「どうしたの?」
「あ、いや…別に」

相変わらず、この人は口数が少ない。
でも、ちっともいやじゃない。

むしろあの時の方が恐かった。

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まだ意識が戻ったばかりなのだから、休んだ方がいいと言ったのに、
「眠れないんだ…」
と言って驚くほど饒舌に、彼は話しはじめた。
魔人像の中に送り込まれたこと。
スカールとの戦い。
BGの本体という3つの脳、そして宇宙空間へ放り出された時のこと。
そして、ジェットとの事…。

「あの時は必死だったから、よくわからなかったけど、大気圏外でも普通でいられたのは、凄いことかもしれないね。」
宇宙飛行士に憧れている子供のような顔をして、彼は笑った。
ほんとうに、小さな子供のよう…。
黙っているのが不安で仕方がないかのように、喋り続けている。
でも…。

「ジョー、もういいわ。やっぱり少し眠った方が…。」
すこし心配になって、無理矢理、彼の言葉をさえぎった。
私の言葉にハッとした顔をして、でも熱からさめたように、ゆっくりとジョーは落ち着きを取り戻す。
そして、腕をのばして、私の手を握りしめた。

「ジョー?」
「…そばに、いてくれる?」
「ええ。いるわ。だから少し休んで。」
「そうじゃなくて。…これからも、ずっと、僕のそばに。」
「えっ…」

胸の中で、なにかが、はじけた。

それは、私が欲した言葉。
ずっとそばにいたいのは、むしろ私の方。
ジョーが、私を必要としてくれている?
この思いは私の一方的なものではなかったの?

「生きていてくれるだけで…、もう、それだけでいいと、願っていたの。」
「フランソワーズ…。」

彼の胸に耳をおき、心臓の鼓動を確かめた。

「ずっと、そばにいてね。ジョー。」

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「どうしたの?」
「あ…。ごめなさい。ちょっとぼんやりしていたみたい。」
「こんどは逆だね。」
「そうね。ふふっ。」

顔をみあわせると、お互いに笑みがこぼれた。
ゆっくりと、ふたりで海岸を歩く。

少し離れたところに、犬をつれたカップルがいる。
「あの犬、少しクビクロっぽくない?」
「うん、さっきからそう思って見てた。」
「あら、だったらさっき『別に』なんていわずに、そう言ってくれればいいのに。」
「そうだね、ごめん。ところで、フランソワーズは犬、欲しくない?」
「そうねえ、飼ってもいいけれど…。あ、やっぱりダメ。」
「どうして?」
「だって、そうしたらちっとも私の事構ってくれなくなるでしょ。ジョーの事だから。」
「そんなことないよ。」
「さぁ、どうだか。…ねぇ、そろそろ戻りましょ。」

反論しかけた彼の肩にもたれるようにして、私は腕をからませる。
そんな私に押し切られたジョーは苦笑しつつ、私の髪に顔を埋めて頭に軽くキスをする。
こんなシチュエーション、ちょっと前までは考えられなかった。
甘い快楽に酔いしれながら、研究所までの道を歩く。


空をみあげた。


なんて、高く澄み切った空なんだろう。
ジョー、あなたはそこから還って来たのよね。


オカエリナサイ。



mayudama繭さま から頂きました。
今回は、ちゃんとキリ番(なんと009番!)を踏んでリクエストさせてもらいました(今まではズルばっかだったけどね……)。
完結編第二幕によると「今も闘い続けている」ゼロゼロズ。結局、彼らは一生を闘い続けて終える運命なのかもしれません。でも、その闘いの合間には、こんな風に穏やかで幸せな時間があって欲しい。暖かい気持ちで過ごした日の思い出を一つでも多く持って欲しいと切に願います。そうでないとやり切れません。なんで、私的には、ゼロキュウはヨミで終わりじゃないんです(一応、原作もそうだし)。
ということで、繭さまには私の妄想を補完するために「ヨミ編後の二人」をリクしました。目が覚めたばかりの饒舌なジョーと、落ち着いてからの言葉が足りないジョーの対比がツボです。こんな感じですよね、きっと。
繭さま、どうもありがとうございました!