未来都市

私は昔から漫画本を、立ち読みの時はともかく、買った場合は割と飽きずに読み返す方で、ゼロキュウの単行本も、もうセリフもコマ割も大体覚えているというのに、それでも何度も意味もなく眺め直したりしているのですが、それでも、何だか今頃になって気がつくことがあります。

例えば、「アフロディーテ編」の BG の保養所がガウディだと気付いたのがいつだったかというと、 この巻を買ったのは出張中の 2001年11月だったのですが、その時すぐではなく、年末、家に帰って来てからだったような気がします。そもそも、初めて読んだのは中学の時でしたが(これはコミックス買ってました)、この頃の私はガウディを知っていたのでしょうか。サントリーだかの CM でガウディがブームになったのって、もう少し後だったかな。ちょっと覚えてませんが、まあ、ともかく、つい最近まで、「目がチカチカする、悪凝りした趣味の悪い施設」ぐらいにしか思っていなかったのでした(ガウディ好きなんですけどね)。初めのコマに、あれだけデカデカと聖家族教会が描いてあるというのに、何とも思ってなかったようなのが、我ながら不思議です。

ということで、話は「未来都市編」になりますが、ここまでの話の流れと娘の絵で、ああ、アレかな、と思われた方(恐らくは私と同世代の方でしょう)。そうです。なんのことはありません、アレです。

アレに気付いたのは、平ゼロ「未来都市」の感想を書くために文庫本をひっぱり出した2002年5月20日あたり、ではない所が、またしても我ながら不思議なのですが、それから1ヶ月後の6月19 日。そう、「めぐみの箱」にクローン娘の SS を頂いた日です。メールでお話を頂いてから、速攻でアップしようと、挿し絵のヒント探しに1ヶ月ぶりに再び開いた「未来都市編」。クローン娘が出てくるのは小広場に降りる階段からです。このあたりは、印象的な構図が多いところでした。階段があって、俯瞰したりアオったり、見開きや大ゴマの空間も広々と、いかにも未来っぽい背景………………って、おや、これは……え、もしかして………?(前に一度やってるな、このパターン)

初読から時が経つこと二十年余り、娘が階段から降りてくるシーンの背景に、今頃になって私が発見したのは……(すみません、こんなんでも一応ヒキなんで、スクロールして頂けますか? おわかりになってらっしゃる方は、まあ、適当におつきあい下さい)。






いや、待て、それだけじゃない、そもそも、この後にあるのは……





あらら、よくよく見たらコレもコレも……




イヤだ、大阪万博じゃないの!





……いや、イヤなんじゃないんですよ。このイヤは「イヤなジョー」のイヤではなく、「イヤだ、タケちゃんじゃないの、元気ー?」のイヤなんで(……? というか、例として間違っているのか「イヤなジョー」。これも、あんまり嫌って意味じゃないんだよな)。私、大好きなんですよ、EXPO '70! 大阪万博には、相当、思い入れがあってですね、もし、サンジェルマン伯爵が来て、「一回だけ時間旅行をさせてあげよう」って言ってくれたら、迷わず、「なるべく人の少ない日に大阪万博に連れてってくれ!」って言おうと常々思っているぐらいなんです。

実は、私、大阪万博に行ったことあります。あるらしいです。でも、幼稚園あがる直前ぐらいで、あんまり物心ついてなかったらしく、少っしも覚えていません。自分の目で、あのステキ・パビリオンの数々を見たという視覚的な記憶が全くないので、とても悔しいのですが、それなのに、どうして、そんなに万博に思い入れがあるのかというと、それは、もうちょっと物心ついてから読むようになった「日本万国博覧会公式ガイド」と、ニャロメが出てくる子供用の万博案内漫画のせいです。

この二冊の本は幼稚園児だった私の愛読書でした。ニャロメの方はなくしてしまったのですが、公式ガイドは表紙がボロボロになったのを今も持っています。ただ今、参照中です。この万博パビリオンのいかにも非現実的な外観は、子供にとってかなり魅力的だったらしく、この時期、やたら駅名を覚える子供と同じで、私も、相当な数のパビリオンの形状と名前を覚えたようです。「ブリティッシュ・コロンビア館」という言葉なども、スラスラと発音していたように記憶しています。

公式ガイドは普通の大人向けの本で、文章は幼稚園児に読めるものではありませんから、パビリオンの挿し絵を見て名前を覚えるのに使用していたと思われます。とはいえ、パビリオンの名前もカタカナだけでなく「住友児童館」とか「鉄鋼館」みたいなのもあるので、どうやって覚えたのか、やはり、ちょっと不思議なのですが、恐らくニャロメ本とすり合わせたり、父親が面白がって口頭でどんどん教えていったりしたのでしょう。

ニャロメ本の方は子供向けの漫画だったので、普通に読んでいたと思います。こちらの本には主なパビリオンのこと以外に、エキスポ・ランドの5コースあるジェットコースターや、月の石や、太陽の塔の内側や、写真を撮ったり似顔絵を描いてくれるロボットや、ひいてはレストランのアイスクリームのことなど、子供の好きそうなものががたくさん紹介されていて、これまた、「万博って楽しそうな所だな」という印象を子供心に強く刷り込んだようです。

ということで、本から入って万博大好きになってしまった幼稚園児の私(そういえば、自分がそこに行ったということは、この時点で、すでに忘れていた)ですが、万博はディズニーランドではないので、私がその魅力を知った時には、そんなもんとっくに終わっていました。父親に「万博、また行こうね」と言ったら、「ああ、あれはもう終わったから、ないんだよ」と言われ、ものすごくガッカリした時のこと、これは、ちゃんと記憶しています。

あの後、沖縄海洋博だのつくば科学博だの花博だの、万博と名のつくイベントは色々ありましたが、大阪万博の時ほど心踊る未来チックなパビリオンがなかったような気がするのは、私が子供でなくなったためなのでしょうか。なんにせよ、私にとって「未来のデザイン」っていうのはあれ、もう、あの時代にあれで刷り込まれてしまっていて、あれ以外考えられないという感があります。なので、これからさらに年をとって、老人ホームかなんかに入る頃になっても都市の風景があんな感じじゃなかったら、きっと私は「まだ、それほど未来じゃないねえ」と思うことでしょう。まあ、ああいうのを博覧会会場以外の場所で日常的に見たいかどうかは微妙なところですが。

そんなわけで、私にとっての大阪万博は「昔見た未来の思い出」です。ワケわからない上に、実体験としては何も覚えていないくせに何言ってるんだかですが、そうなんです。今でも、折にふれ、太陽の塔や、あれの腰のあたりを囲んで広がる巨大な四角屋根や、その下の「お祭り広場」や、不思議な形をしたパビリオン群や、動く歩道や、空中ビュッフェや、人間洗濯機や、天気によって開き方が変わるでっかいキノコなどに思いを馳せ、「ああ、もう一回、やってほしいなあ」とつぶやくことがあります。そして、そんな時、私の心に流れる「リメンバー大阪万博イメージソング」は…………すまん、著作権協会、見逃してくれ! 「あの頃の未来にボクらは立っているのかなあ」(この部分のみ)です! 以上!





………じゃなくて、だから、どうしてこれほど好きな万博パビリオンが、あんなにたくさん描いてあったのに(よく見たら、他のシーンにもあった)、今の今まで気付かなかったのだ、という、それだけの話でしたね。すみません。

そういえば、「惑星ソラリス」の未来シーンを撮影に来たA. タルコフスキーが、ロケ候補地だった大阪万博を気に入らず、やめて赤坂見附の立体交差を撮ったという話を聞いたことがありますが、石森先生は未来都市に万博を採用してくれて、よかったです(いやいや読書感想文を書いてる小学生並みのシメだな)。