I want to be with you. ***************** presented by 紫龍sama *****************
《世界を救った英雄達の凱旋だ》
“金色(こんじき)の騎士 シオン
” そして、その戦友達にも名が与えられた。 賢者サーレントについていたレギンと、 メシア・リザについていた元バベルレジスタンスリーダー・ガーライルは“聖銃士 (セントファイア) ” リザについていた爬虫族のピピンと言う少年は“爪撃(そうげき)の野生王 ” サーレントについていたロロというダナン族の少年、 騎士シオンについていたダナンの王・ラミレスと、 現在巨人の塔の番人となっているテュールという巨人族は “光の言霊師 ” 現在騎士シオンの妻になっているフォクシーは“戦乙女(ヴァルキュリア) ” メシア・リザについていた水棲族の神官であるマリーナは “汚れなき水の意志知る者 ” 賢者サーレントの兄弟子であり、かつてはターレスと肩をならべ、 クリューヌ一の剣遣いとして名を馳せていたソークと、 疾風のデューンについていたキッドは“舞剣師(ダンス・ソード)”と呼ばれている。 おそらく、人間の歴史が続く限り、彼らの事は語り継がれていくだろう。 そう、遥か昔、魔を祓い、世界を創造した《四勇者》のように・・・・・・。 でも、あたしは、そんな人達は知らない。 あたしが知っているのは、いつもカスタギアのおじ様に怒鳴られている、 銃の扱いだけは上手だけど、どこか抜けている、 いつまでも子供な幼馴染みのレギン=カスタギア ≠ニ、賢者ソロン様の弟子であり、 いつもドジばかりのレギンを苦笑しながら柔らかく見守ってくれる、 優しくて落ち着いた雰囲気のサーレントさん =Aそれからサーレントさんの兄弟子で、 無口でクールで、でも時々すっごく危ない事を言うソークさん =Aそれから三人がアヤシイ教団から助け出したミステリアスな雰囲気のロロ君 =B 他の人達は会った事はないけど、少なくともこの四人についてはこう言える。
カウンターの中にある店番用の椅子に座っていたあたしの頭に少し大きな、 優しい手が乗せられ、手の主があたしの顔を覗き込む。
「なによ。考え事してちゃいけないの?」 あたしはレギンの抗議の声を聞き流し、従業員用の、 おじ様のラボに繋がっている扉から出た。
「お、ミーミル。出掛けるのか?」 あたしは軽く頭を下げ、大きな機械の横に取り付けられたはしごを下がって裏口から町に出た。
あたしは泣きたい気持ちを必死におし止めて、
何の気なしに街を出て樹海へ向かった。 「・・・・・・ヤダ。あたし、何考えてるんだろ・・・・・・」 あたしは何時の間にこぼれたのか、頬を伝う涙を拭き、 しばらくその日だまりの温かさの中でまどろんでいると、 本当にいつの間にか・・・・・・柔らかい草の上で眠っていた。
・・・・・・シャン・・・ ・・・・・・ピシャン・・・・・・
あたしは、不意に顔に落ちた冷たい水で目を覚ました。 ただし、両手両足を縄でしっかりと縛られていなければ。 「おやぁ? お嬢ちゃん、お目覚めかい?」 不意にあたしの斜め前で焚き木を囲んでいた男の一人がこちらを向く。 赤い炎の光に照らされて映るその顔は下劣の一言。 ちゃんとした格好をすれば上流階級の人間に見えるかもしれないけど、 その顔ははっきり言ってスケベオヤジの顔と言っていいだろう。 肉付きはあまり良くなくて、ほっそりしてるけど、 イヤらしい目付きがネック(?)になって、まず「カッコイイ」とは絶対言えない。
「あんた達、何者? あたしみたいな小娘攫ってなにしようっての?」 最初にあたしを見た男の向かって左に座ってる男が言う。 こいつもまたイヤらしい目付きでこちらを見ている。 前の男の兄弟かなにかだろうか、何処となく顔が似ている。 「もちろん売り飛ばすんだよ。 お前みたいな小娘が好みって言うお偉いさんの所にな」
今度は向かって右の男が言う。
こいつは前の二人みたいにイヤらしい目付きはしてないけど、
やっぱりどこかアブなそうだ。目の焦点が微妙に合っていない。 「その顔は事態の全てを理解したな? ま、呪うならあんなところで無防備に昼寝した自分を呪うんだな」
向かって左の男があたしを嘗め回すように見ながら鼻で笑って言う。
ムチャクチャ悔しい・・・・・・けど、この男の言う通りだ。
何で、樹海になんか行く気になったんだろう・・・・・・ もしかしたら、レギン・・・・・・助けに来て、くれないよね・・・・・・・・・
俺は夕食の準備も整っていない食卓を叩いた。
「レギン・・・・・・気持ちは分かるが少し落ち着け。
今、爺が何か作ってくれると言っていたから」
俺に店番を押し付けて出掛けたミーミルが夜になっても帰ってこない。
いつもならいくら遅くなると言ってもこの時間には帰るのに、だ。
「一体どこほっつき歩いてんだ、あいつは・・・・・・」
キッチンの方から爺の呑気な、
しかし、明らかに俺を煽っていると分かるコメントを発する。
「ちょっと夜風に当たって来る。夕飯、二人分残しておいてくれよ」
俺はどこまでも呑気な爺の言葉を聞き流し、ドアを開けて夜の町を走った。
「何をモゾモゾやってるのかと思ったら・・・・・・縄抜けなんてできるのか」 不意にあたしの背後から男の声がする。 薄暗いのもあって良く分からないけど、歳はソークさんと同じくらい、 あたしが横になってるからかもしれないけど、 すごく背が高くて、フード付きのローブみたいなものを着てる。 声は言霊で変えてるのか、何だか気味の悪い声だ。
「グ、グラーズさん」 男達にグラーズと呼ばれた男は言って、あたしの両手足の縄を結び直した。 凄く固くて、刃物でもないと解けなそうだ。
「でもグラーズさん、珍しいですね。アジトまで来るなんて・・・・・・」
グラーズの言葉に男達は一様に色を失い、黙って酒に手を伸ばす。
俺は夜の樹海を探し回っている。今日が満月だった事が救いだ。
町の連中に聞きまわってミーミルが樹海の方に歩いていったというのを聞いたはいいが・・・・・・樹海は広大だ。
一体何処に行ったのやら・・・・・・。
不意にあたりを見渡すと、小高くなっている所で銀色に光る物が見えた。
近寄ってみると、俺が戦いに身を投じる前、
まだ汚染されているなりに平和だった頃、ミーミルに渡したバレッタだ。
俺は銀色のバレッタを胸ポケットに入れ、あたりを捜す。
噂に聞く所だが、野盗どものアジトは樹海に有るらしい。
俺は持って来たアンタレスをいつでも使えるようにして夜の闇の中を走って行った。
あたしは小声で側に座る大男に問いかける。
さっきから何度も話しかけているが、男は腕を組み、
こちらに背を向けて静かに座しているだけだ。
「な、何だ!?」
「グ、グラーズさん!?」 フードの中から聞こえたのは、昔聞き慣れた声の面影を残した、低い声。 この、しっかりした腕の感触・・・・・・。
ローブ男は無造作にあたしを抱きかかえてない方の手でフードを脱ぐ。
「クリューヌのグランザだ。
お前達三人はクリューヌ兵団第三隊長の俺の名においてここで捕縛する」 呆然とするあたしをよそに煙の向こうから歩いてくる人影―― レギンとグランザは笑い合って言う。 「くっそ・・・・・・死ねぇ!」 男達が傍らに置いてあった剣を取り、こちらに突っ込んでくる! 「ボム!」
咄嗟にあたしは男達の方に手を翳し、言霊を発動させる!
不意に三人の目が合い、三人とも、あの頃の顔で笑っていた。
洞窟から出て街に帰る途中、レギンはあたしに銀色のバレッタを渡した。
一年くらい前の誕生日に貰ったプレゼントで、
いつも髪留めに使っていた。多分、攫われた時にでも落ちたのだろう。
「ね・・・・・・ねぇ、レギン・・・・・・その・・・・・・」 レギンはそう言って立ち止まり、あたしの方を向いてくれた。 丁度満月がレギンの前に有って、柔らかい月光がその顔を照らす。 「あんまり心配させんじゃねーよ」 レギンはそういって再び前の方に顔を向けると、 あたしの方に手を差し伸べてくれている。 いつか子供の頃に、そうしたように・・・・・・。 あたしはその手に向かって駆け出した。
ずっと、愛する人の側に・・・・・・・・・・・・
|
![]() | by 紫龍sama | ![]() |
---|