presented by 劉米紫
息子の俺が言うのもなんだが、親父は、あんまりいい人間じゃなかった。
人として、父として、夫として・・・。
おふくろの顔は、親父のせいでほとんど覚えていない。
ガキの頃から親父に連れまわされて、家になんか滅多に帰らなかった。
物心ついてからおふくろに何回会ったんだろう? 片手でおつりが来る。
なのに・・・なんで分かったんだろう?
この女性(ひと)が、俺の母親だって・・・。
「・・・・・・・・・お前・・・、キッドだろ?」
女性は、まるで死んだ人間にでも会ったような驚き方だった。
確かに俺が消息を絶ってから、3年は過ぎてたからな・・・。当たり前と言えば、当たり前だ。
普通なら、生き別れた母子(おやこ)の感動の再会ってところだろう。
だけど、俺は、女性の期待には応えなかった。
「おばさん、悪いけど人違いだ」
「え・・? だって、お前・・・そのお守りは・・・・?」
「あ? これ? 何だ、おばさんの子供のモンだったんだ?
行き倒れてた死体から、ちょっと失礼したモンさ。
・・・ッてことは、アレがおばさんの子・・・・」
「ウソをお言い!」
ヒステリックな叫びと一緒に、俺の頬が鳴った。
自分が打たれたんだと気が付くのに、少し時間がかかった。
「・・・・・おい、おばさん、いい加減にしとけよ。
俺にだって限界ってモンがあるんだ。いきなり話しかけて来て、
しつこいんだよ」
感情を押し殺して女性を睨みつけると、後は何も言わずにそこから離れた。
偽名で取った宿へ戻ると、備え付けの鏡に自分の顔を映す。
「・・・・しけた面だな・・・・・」
赤くなった頬を見たら、投げやりで、ひねくれた独り言が思わず漏れる。
殴られたのなんて、これが初めてじゃない。
親父に連れまわされてたときには、そんなのは毎日だった。
短気で手の早かった親父は、「仕事の覚えが悪い」とか、
「段取りの手際が悪い」とか、何だかんだ言ってよく俺を殴った。
だから、殴られるのなんて、慣れてる。
慣れてるのに・・・・。
何で俺は、泣きそうなんだろう?
あんな、やせ細った腕で殴られたって、痛くも何とも無いのに。
スプリングの悪いベッドにうずくまり、ひざを抱えた。
体の奥で渦巻く、このわけの分からない感情を抑えるには、
これくらいしか手段が見つけられなかった。
カチ・・ カチ・・ カチ・・
時計の秒針が時を刻む音が、妙に大きく聞こえる。
自分の呼吸の音も、こんなに大きかっただろうか?
・・・・・・・・・お前・・・、キッドだろ?
違う。
違わない。
俺は、あんたの子だよ、おふくろ。
でも・・・・・。
13年も一度も話したことの無い母子なんて、親子って言うのかよ?
初めて話した言葉が、自分の子か否かの確認の言葉なんて、
そんなのアリなのかよ?
まとまりの無い恣意が、むやみやたらに頭の中をかき回している。
気が狂いそうだった。
頭の中で、言葉にならないわけの分からない叫びのようなものが、
大声でがなり立てている。ひどい騒音・・・。
全く、このときの俺は、いつもの俺じゃなかった。
思慮らしい思慮は一切存在せず、ひとつの人格としてものを判断することなんて、
到底無理だった。
だから、手遅れになるまで、それに気づかなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
誰か・・・いる。
いや、いるなんてもんじゃない。ひんやりとする刃先が、俺のわき腹に触れている。
咄嗟に、上着の裏側に忍ばせてあるナイフに手を伸ばしていた。
とたんに、刃物がぐっと押し付けられる。
「動くな!」
威嚇の声が、俺の動きを制止する。
だが、その声は情けないくらいに上ずっていた。
(この程度のやつなら、簡単にあしらえる)
不幸中の幸いというか、この侵入者はそれほど出来るやつじゃないらしい。
一瞬でさっきの錯乱状態から抜け出した俺は、むしろ余裕を持って口を開いた。
「待て。興奮すんな。金ならいくらでもくれてやる」
「ど・・・どこに隠してある!?」
どうやら侵入者は、さんざん俺の荷物をかき回した後らしい。
俺は思わずがっくりきた。
侵入者の間抜けさではなく、そこまで判断材料が揃っていながら、
こいつに気づかなかった俺の情けなさにだ。
お前は平常心を簡単に失いすぎだ!
そんなんじゃいつか命を落とすぞ!
くどいほど親父に言われた言葉が脳裏をかすめる。
あの時は、「同じこと言ってやがる、うるせえな・・」
くらいにしか思ってなかったけど、ようやくそれが身に沁みた。
「な・・・何がおかしい!」
不意にまた、刃先が押し付けられた。
どうやら気づかないうちに笑っていたらしい。
それをこいつは、自分が笑われたのと勘違いしたのだ。
(笑われる覚えがあるってことだな)
ホントにこんな三流の野郎に背後を取られるなんて、俺も飛んだどじを踏んだ。
これでこいつにブスッとやられて終わったんじゃ、死んでも死にきれなくなる。
「あんたのこと笑ったんじゃないよ。思い出し笑い。
あ、知ってる? 思い出し笑いするやつってムッツリなんだってさ。
やっだね〜、俺、ムッツリなんかな?」
わざとふざけると、侵入者はあきらかに狼狽えた。
俺の言葉にどう対処するべきかを逡巡した時に、数瞬の隙ができた。
そのチャンスを逃さずに、手加減無しの肘鉄を顔面にぶち込んでやる。
「うわっ!」
情けない声を出してのけぞった横っ面に、肘鉄をぶち込んだ腕を振り抜いて、
裏拳を叩き込んだ。
侵入者は、横っ飛びに吹き飛んで、みっともなくベッドから転げ落ちた。
ベッドの上には、取り落としていったナイフが無造作に転がっている。
おれはそのナイフを拾うと、床に後頭部を打ち付けて目を白黒させているそいつの腹を、足で押さえた。
ようやく明らかになった侵入者の正体を見て、思わず声をあげる。
「なんだ?! まだガキじゃねーか!」
言った後で、自分の人のことを言えた義理じゃないことを思い出したが、自分以外に、
こんな年齢で盗み(しごと)をやってるやつがいるとは思ってなかったから、正直意外だった。
しかも、こいつは俺よりもまだ1つか2つ年下だろう。
「えぇい、もう! どうにでもしやがれ! 煮るなり焼くなり勝手にしろ!」
大の字になって喚きたてるのを見たら、こっちの方が「勝手にしろ」って気分になった。
面倒くさくなって足をどける。
「ほらよ」
落としていったナイフを、いい加減に投げ返してやると、
大げさなくらい慌ててナイフを避けた。
「ばっか野郎! アブねーじゃねーか!」
「あ? それがさっきまで俺にナイフ突きつけてたやつが言う台詞か?
ぐだぐだ言ってねーでさっさと出てけよ。俺はもう寝たいんだ」
「・・・・・へ?」
「なんだよ、その間抜け面? 出てけって言ってんの、分かった?」
鼻先に指を突きつけて、「分かったらさっさと出てけ」と念を押すと、
俺はベッドにもぐってガキに背を向けた。
今日一日で、馬鹿みたいにいろんな経験をしたもんだから、
とっとと寝て頭をすっきりさせたい気分だった。
侵入者のガキは、何か用でもあるのかしばらくもじもじしていたようだったが、
そのうちごそごそと窓から出て行った。
* * * * *
それからどれほども経たないうちだった。
コン・・・ コンコン・・・
誰かが扉をたたいている。
安眠を妨害されて、俺の機嫌はささくれ立った。
「あ? 誰だよ!」
「ああ、はい、すいません、フロントのものですが」
怒鳴りつけると、慌てた様子でばあさんの声が応えた。
「フロント? 宿代ならちゃんと払ったろ?」
「はい、いただいております。ええ、なんですか、
ちょっとお客さんを訪ねてこられた方がありまして」
「俺を訪ねてきた? 人違いだろ?」
言いながら俺は手早く荷物をまとめた。
俺は偽名を使っている。その俺を訪ねてくるやつなんて、いるはずが無い。
もし、いたのなら、それは罠だ。
そうでなくても、少なからず危険なものであることは間違いない。
こうなったら一刻も早くここを出たほうがいい。
「あぁ、困ります、勝手に上がってこられちゃ・・・。
はい、はい。このお部屋の方に間違いはないんでございますよ」
なんて奴だ、もう来やがったのか? 逃げ出すには時間が足りない。
窓を降りてる途中で上から手を出されたんじゃ、さすがにやばい。
こうなった以上、結論はひとつだ。
「ここで迎え撃つしかねーか・・・」
ベッドの下にまとめかけの荷物を隠す。
相手に、こっちが警戒してるのを感付かれるのはまずい。
わざとベッドへ戻り、腰から下を上掛けで隠した。
その下で、身に付けているナイフを確認する。懐にまず一本。
他に、ズボンの後ろのポケット(中はフォルダーに加工してある)
に左右あわせて6本。ブーツのベルトに挟み込んであるのが、
右に2本と左に1本。
こんだけあれば、逃げる時間をもらえる程度には出来るだろう。
後は、相手が肉厚じゃないのを願うのみだ。
「仕方ございませんねぇ。はい、起きておられるようです。はい、どうぞ」
低姿勢なばあさんの声が終わると、ゆっくりと扉が開いた。
俺は上掛けの下で、そっと右のブーツからナイフを抜いた。
(来るなら、来い!)
平静を装いながら、全神経を扉に集中させる。
が・・・。
次の瞬間、俺の集中力は、あっという間に拡散した。
「・・・・・・・・おふくろ・・・?」
思わず漏らしてしまった言葉に、死ぬほど後悔した。
自分で、自分が息子であることを認める発言をしてしまうなんて・・・。
「ごめんよ、こんな遅くに・・・」
おふくろは、俺の失言を気にも留めなかった。
留めなかった、と言うより、もう分かってたからだろう。
俺がなんと言って否定しようとも、俺が自分の子供であるってことに・・・。
俺でさえ、一目でこの人が母親だって分かったんだ。
実際に自分の腹から生んだ子供だったら、なおの事、分からないはずがない。
いまさら否定したって無駄だと分かった俺は、しらばっくれるのをやめた。
宿のばあさんがフロントへ戻っていくのを確認してから、おもむろに口を開く。
「何で・・・ここが分かったんだよ」
「だって、お前・・・お前のことだから、
きっと父さんと同じ名前で泊まってるだろうと思ってねぇ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
思わず驚きに目を見張る。
確かに言うとおりだった。俺は親父の使っていた偽名をそのまま使っていた。
だけど、驚いたのは、おふくろのその勘の良さじゃない。
「・・・・・親父の仕事・・・・知ってたのか?」
おふくろは黙って頷いた。
「じゃ・・・・・俺の・・・仕事も?」
おふくろはまた、黙って頷いた。
「お前は必ず父さんの後を継ぐと思ってたよ」
「別に継いだわけじゃない。他に生活してく手段が思いつかなかっただけだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
「なんだよ、鳩が豆鉄砲食らったような顔して」
「お前・・・父さんから何も聞いてないのかい?」
「聞くって何をさ?」
俺の言葉に、おふくろは、古ぼけた紙切れを見せることで応えた。
不審に思いながらもそれを受け取る。
それは手紙のようだったけど、あんまりにも古すぎて、文字はほとんどかすれていた。
引きつ眇(すが)めつしてようやく読み取れたのは、
・・・身重のお前を残して、勝手だと思う・・・
・・・全ての・・・・が幸せになれる「宝」というもの・・・
・・・お前と子供のために・・・
・・・必ず戻る・・・
「これが・・・何?」
「お前が生まれるほんのちょっと前に、父さんからもらったんだよ」
「・・・いや、それは何となく分かる。で、これで俺に何を・・・」
「お前は、父さんをどんな人だったと思ってるんだい?」
「どんなって・・・」
親父に対する怨み言なんて、掃いて捨てるほどある。
でも、それをそのままおふくろに言ってしまって良いもんだろうか?
一応、おふくろの<旦那>なわけだし・・・。
「乱暴で、わがまま勝手なひどい人だと思ってるんじゃないかい?」
「え・・・? 何で分かっ・・・・」
あまりにも素直に認めてしまって、思わず口を押さえた。
そんな様子を、おふくろは気にしないどころか笑って見ていた。
「やっぱりねぇ・・・。あの人は、自分を巧く表現できない人だったから」
「巧く表現できねーって・・・、そういう問題かよ? あんなボコスカ殴りやがって」
「許してやっとくれ。父さんはね、必死だったんだよ。
詳しくは知らないけど、どうしても見つけなきゃいけないものがあったんだよ」
「なんだよ、見つけなきゃいけないもんって」
「それは、母さんも知らないけど・・・」
「何にせよ、けっきょくそれは親父一人の事情だろ? 俺には関係ねー」
俺なりの勘ってやつで、俺はここでおふくろと、
キッチリ訣別しとかなきゃいけないってのが分かっていた。
はっきりとは言えないが、「俺は親父を認めちゃいけない」気がしたんだ。
目の前にいるこの人のために・・・。
「聞いとくれ、キッド・・・」
「もういい、聞くだけ馬鹿馬鹿しい。帰ってくれよ」
「キッ・・・」
「だいたい、あんたこんなところに来てていいのか?
昔の子供のことなんかより、今の旦那と子供のこと考えてやれよ」
これはただの当て推量だった。
もちろん、おふくろと話しながら、一番ありえそうな選択肢を選びはしたけど。
おふくろの顔を見て、俺は自分の作戦が成功したことを知った。
「・・・・・・・・・・・! 気が付いてたのかい?」
「まぁな、親父譲りの下世話な勘ってやつさ」
「・・・ごめんよ、キッド。お前や父さんを裏切る気はなかったんだよ」
「いいさ、俺は全然気にしてねー。親父だって一緒だろうさ。
自分じゃ幸せにできなかったんだ。四の五の文句言えた立場じゃないだろ」
「お前、まだそんなふうに父さんのことを・・・」
「おふくろの話を聞いたからって、俺が知ってる親父が変わるわけでもないだろ?
俺は俺が知ってる親父以上のことは知らない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
意図的にそうしたんだけど、取り付く島もない俺の態度に、おふくろは肩を落とした。
おふくろは、俺の腹の底を探るみたいに、しばらく俺の顔をじっと見ていた。
でも、俺にとって感情の隠匿なんて、息をするのと同じくらいのことだ。
しばらくして目をそらすと、がっかりしたように首を横へ振った。
「もう帰るけれどね・・・また・・・」
「忘れたのかよ? 俺、宿無しの泥棒なんだぜ? 明日ここに来たからって、
俺がいる保証は無いし、そもそも一般家庭の奥様に、
泥棒の知り合いなんかいていいのかよ?」
「キッド・・・・・・」
「おふくろは悪くない。でもことの成り行きってもんがあるんだ。
これからは赤の他人だと思ってくれよ」
これは、おふくろにとって最も残酷な言葉だったかもしれない。
はっきりと自分たちの子供であることも拒絶されたってことなんだから。
でも、これは、最初で最後の俺の親孝行だった。
おふくろのこれからの幸せのためには、俺という存在はいちゃいけない。
だから俺は、徹頭徹尾、おふくろに冷たくあたった。
おふくろがうっすらと涙ぐみながら部屋を出て行くときも、見送ることはせずに、
すぐ扉を閉めた。
遠ざかっていく足音をじっと聞いていたら、
昼間おふくろに打たれた頬が、熱くなったような気がした。
* * * * *
おふくろを避ける意図もあったけど、その町の仕事が当に終わっていたこともあって、
翌日俺は朝一番に宿を発った。
町から出てほんの少しもいかないうちだった。
後ろからついてくる奴がいるのに気づいたのは。
誰かと思って様子をうかがえば、
昨夜俺の部屋にもぐりこんでいやがったあいつだった。
「・・・・・・・おい」
「へ?」
「一体どこまでついてくる気なんだよ?」
「どこって・・・さぁ?」
「さぁ・・って、自分のことだろうが? そうやって黙ってついてこられたんじゃ、
俺が落ちつかねーんだよ」
何か用があるのかないのか、ただ黙ってついてくるそいつが、さすがの俺も気になって仕方がない。
気になる、といっても、別にそいつに興味があるというわけではなく、単に煩わしいという意味で。
こっちが折れて話しかけてやれば、満足してどこかへ行くだろうと思った。
が、そいつは何を勘違いしたのか飛んでもないことを言い出す。
「じゃあさ、次の町まで何かしゃべってようか? あ、何なら一緒に仕事してもいいよ?
そうだ、せっかくだから俺とつるまない? 俺、逃げ足だけはすごいンだぜ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
冗談じゃない!
そう言おうと思ったが、あまりにも突拍子もない提案に思わず脱力してしまった。
何か、いちいち否定するのも面倒くさい。どうせ食い下がってくるに決まっている。
「・・・・・・・・・・勝手にしろ」
「あ、それってOKってことだよね? 何だ〜、結構アンタも俺とつるみたかったんだ。
それならそうと言ってくれりゃいいのに」
「何でそうなる?!」
「え? だって、二つ返事でOKくれるってことは、アンタもその気だったってことだろ?」
このお気楽な思考回路が羨ましい。何なんだ、こいつ?
でも、一緒にいて退屈はしないだろうなぁ・・・。
「で、お前、名前は?」
「ごんべえ」
「は?」
「俺って名前無いの。気がついたら親がいなかったから。だから名無しのごんべえ」
冗談じゃねー!
仮にも伝説の大盗賊様のご子息っていう、泥棒としちゃ由緒正しい俺が、
なんで「ごんべえ」なんてふざけた名前の奴とつるまなきゃイカンのだ?!
「その名前、却下」
「え〜? なんで?」
「問答無用。違う名前にしろ」
「しろ・・・って言われてもなぁ・・・。アンタつけてよ。俺、思いつかないから。
あ、でも良い名前にしてくれよ。俺のこれからの人生決まりかねないんだから」
自分では「ごんべえ」なんて名前を平気で名乗っといて、人には注文つけるか、こいつ?!
やばい、何かこいつといたら、俺ツッコミばっかりしてなきゃいけないんじゃないか?
って言うか、俺等ってそういう職業じゃないだろ?!
ああ・・・、ダメだ、すでにツッコミが板につき初めてやがる・・・。
「ちゃんと考えてる?」
「だー、うっせえな! お前に良い名前なんか意味ねーだろ?!」
腹立ち紛れに怒鳴りつけて、ふとこいつの名前を思いついた。
ものすごく悪い名前。
「お前、
『キッド』
な」
「お? 何か、格好良さげじゃん♪」
「そうか? 世の中で一番親不孝な野郎の名前だぞ? だから、かなり悪い名前だと自覚しておけ」
「大事なのは響きだろ? だいたい俺、親不孝しようにも最初ッから親いねーし♪
つーわけで、俺はキッドだ。アンタは?」
名前つけてもらった人間に、その場で自己紹介するかね、普通?
何か変な奴に関わっちまったなぁ、と思いながらも、意外に不愉快ではなかった。
相棒ってヤツも結構悪くない。
こいつとは、長いつきあいになりそうな気がする。
そんなことを思いながら、俺は、
俺が知ってる中で『キッド』以上に悪いと思っているヤツの名前を名乗った。
「デューン」
Bad End? ... Good End.
作者コメント
誰が誰かが分かり難いのは、最後にこれを持ってくるためでした。
つーか、途中でオチ、ばれてたでしょうね・・・。
何か、やたらと長くなってしまったんですが、どうしても削れなくてそのままにしてしまいました。
多分読んでる方々には、「ここ、イラねえんじゃないの?」ってところがいっぱいあると思いますが、
上から下までじっくり読み直しても、
こめむらさき的には要らないと思えるところがなかったもので・・。
上手くまとめられないのは、実力のない証拠ですね(遠い目)。
無断転載禁止
(C)クリューヌの城/劉 米紫
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