ライナーノート ということ
 LPレコードやCDなどを購入すると、ライナーノートと呼ばれる文章がついている事が多い。
 殆どは、その作品や作家を知る人が寄せた文章で、作品世界が生まれた背景だとか、鑑賞しての感想だったりする。

 DVDというメディアは、大容量かつインタラクティブな操作性があるため、印刷されたライナーノートがあまり充実していない。かわりに『特典映像』がひとつの売りになっている。
 例えば、映画であれば、メイキングものであったり、監督や俳優のロングインタビューだったりする。(殆ど、映画専門TV局の番組の焼き直しか再録だが・・)

 きょう、宮崎駿ファンの私が待ちに待った「パンダコパンダ」が発売になった。

 特典映像として収録されていたのは、日本テレビが94年、『平成たぬき合戦ぽんぽこ』の公開前に放送した『宮崎駿氏と高畑勲氏の対談』と、今年、9月、おそらく、このDVD用に収録した『高畑勲氏ロングインタビュー』である。

 あまり、他人様が作ったものを一方的に批判するのは良くないとわかっていながらも、この二つのインタビューがあまりにも対照的だったので、一言、言っておきたくなった。

 日本テレビが放送した94年の対談は、聞き手(この場合対談だから、進行役)はベテランの石川牧子アナウンサー。
 おそらく、宮崎世界やアニメにさほど造詣が深くはないと思われる石川アナウンサーだが、専門的な一部のマニアしかわからない深い話題に終始することなく、前に出過ぎず実に巧く、二人に喋らせている。さすがベテラン、といった感じ。

 私のわずかな経験から言って、こういう雰囲気を作るのは、簡単なように見えて実は非常に難しい。
 インタビューは前にも書いた気がするが、相手に気持ちよく喋ってもらってなんぼの世界。
 聞き手の考えや喋り、パーソナリティが前面にでるのは「徹子の部屋」で充分なのだ。

 宮崎氏はテレビにも多く出ておられるし、そもそも「話好き」。
 この場合、難しいのは口が重い高畑さんにいかに気分よく話してもらえるか。つまり、カメラの前で、自分の感じていることや考えを、話してもらえるか。
 良い悪いは別にして、いきなり、親しくもない人に、自分の考えを、言葉で表現して話すということは、日本人は簡単に出来ることではないのです。
 特に、"最高の自己表現"は『アニメーション』という方に、それを『喋り』で求めるのは酷というもの。

 石川アナウンサーは、そこを巧く、お喋りの宮崎氏を良いムードにもっていって、高畑氏に喋らせている。
 細かい事だが、流石だと思うのは、石川アナウンサーの前にはメモの類が一切ない。
 つまり、頭に細かい事実や段取りなどが入った上で、その場のムードや流れに合わせて進行しているのである。見事。

 前置きが長くなった。もう一つの、恐らく、このDVD発売に合わせて収録した(それも慌てて)と見られるインタビュー。聞き手は坂上みきさん。

 予め言っておくが、私は彼女の持つイメージや声質は嫌いでもないし、むしろ、英語がらみの話や、洋画の紹介などテンポがあってどちらかと言えば好きなタイプ。

 なのに、このロングインタビューにはインタビュアーの彼女に心底、辟易してしまった。

 結論を言えば、『何故、彼女が聞き手なのかわからない』のだ。
 ハリウッド映画の監督や俳優のインタビューのようなつもりで彼女を起用したのだとしたら、企画者やディレクターによる人選はとんだ思い違いだ。
 
 まず、インタビューの入りのムードから、違和感。リズムがまるで違う。

 パンダコパンダのほんわかとしたムード、その作品を紡ぎ出した高畑氏のリズムに比べれば、はるかに早い喋り。

 インタビューの冒頭、いきなり『まくし立てられるような質問』がやってきて、氏は口篭もりながら、答え出す。
 全体の受け答えも、ペースが掴めず、言いたいことがいえない、という雰囲気なのだ。

 質問にしても、恐らく、ディレクターか作家が渡したメモの棒読み。とても自分で考えた質問とは思えない。

 質問は極めて、専門的と言うか、「その世界」の内容なのに、彼女の知識や、感性は、とてもそこまで達していないアンバランスさ。
 だから、高畑氏が真摯に答えても、反応できない。「ふーん」で終わり。

 恐らく、このパンダコパンダの二作と、となりのトトロぐらいしか見ていない人が、『ジブリ世界は〜』などという質問をしてはいけないのだ。

 もしかしたら、彼女にその責任があるわけではなく、スタッフがこのような事に無頓着な人たちで、むしろ、充分な企画意図や説明が行われず、坂上さんの方が現場で困惑していたのかも知れない。

 ただ、多分、彼女が知ってるなり、見たなり、感じたなりの質問を正直にぶつけた方がまだ、救い様はあったのかもしれない。
 その人を深く知らず、作品にもたいした興味も感じないまま、用意された(専門的な)質問メモだけで、その場を凌いでいるのが、モロ見え、なのだ。
 ライナーノートのような内容を求められているのに、実に薄っぺらいインタビューしかできていない。

 こういったインタビューがDVDに収録されてしまうというのは、彼女自身も遺恨を残したのではなかろうか、と勝手に推察している。

 批判だらけの長い文章なりました。ごめんなさい。

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