三千円の芸 ということ
 久し振りの談志師匠、長崎の高座。
 これは行くしかないでしょう。

 しかし、コンサートなどの類は開演時間が早いのです。因みにこの日は午後6時半。番組のスタートが午後6時24分からですから、完全に見ようと思うなら、仕事を休むしかない。
 しかし、いくら『生』談志師匠とはいえ、レギュラー勤務を休むわけにもいかない。

 結局、"会社の隣のビル"での独演会という地の利を生かし(?)、OA終了とほぼ、同時に客席へ入る。

 噺は「らくだ」だった。
 着席した時には、すでに長崎伝来の看看兮(かんかんのう)を死人が踊り終えた後で佳境に入っている。 
 うーむ。残念至極。初めから、それも枕から聴きたかった。

 しかし、談志師の演じる「顔じゅう傷だらけの兄貴分」の凄みは充分堪能できたし、久蔵が酔って虎に変わっていく様にも唸らされた。
 やっぱり、談志師匠は凄い。

 でも、独演会と銘打つからには、できれば、もう一席、堪能したかった。

 3千円と言う木戸銭では一席と言うのが、師匠が設定する自らの芸の相場なのらしい。確かに、3千円払って見るに充分な芸であったと私は納得できた。
 でも、正直、もう少し、見たかった。あと、千五百円、2千円払ってでもいいから、もう一、二席、師匠との空間を堪能したかったというのが、私の偽りのない本音であるし、そう思った人も多かったと思う。 

 自分の貰うギャランティーよりも、むしろ、客が、自分の芸の対価として払う「木戸銭」の額にこだわると言うのも、談志師らしいなぁと感じた独演会であった。