舌の記憶 ということ
 人は、子供の時に愛した食べ物の味を一生追いかけるのだという。

 世界的なハンバーガーメーカーは、そう言う意味で、子供たちに沢山食べてほしいという仕掛けに一生懸命だ。

 私の舌の基本は、とある店にある。小さい頃に住んでいた町のレストランで、同じブロック内にある『町の洋食屋さん』だった。
 その店の夫婦には子供のようにかわいがってもらったし、しょっちゅう家族で食事にも行ったし、家に届けても貰った。
 ハンバーグ、オムライスなどといった、私の洋食好きはこの時から始まったし、いまだに求めている味はこの店の味のような気がする。

 その後、私たち家族も引越し、あまりこの店にも行けなくなった。1年に数回訪ねるかどうかという状態だった。

 しかし、先日、この店の前を車で通った時、店がなくなり、違う店舗になっていた。
 店を改装したのかもしれないが、名前も変わっておりひょっとして、店を閉じたのではないかと心配している。
 以前、訪ねていった時、御主人の体調が良くないなどとおっしゃっていたので、ひょっとして廃業なさったのかもしれない。

 自分の味の原点が、その店にあった。
 子供の時に作られた「おいしい」と感じる味覚を味わう事は、もう二度とできないのかもしれない。
 そう思うと、とても寂しい気分になった。