社長室行き ということ
 私が子供の頃、ある麺料理の店ができた。その店は「長崎ちゃんめん」と言った。
 1号店は長崎市日見地区の大曲、2号店は浦上駅の前だった。家が近くだったこともあって、よくこの店に家族で行った。

 ちゃんめんとは、『ラーメン』のようなコシのある麺を使って、『ちゃんぽん』のような調理方法。『ちゃんぽん』と『ラーメン』を合わせて『ちゃんめん』というネーミングだと店内に記されていた、と記憶している。

 それまで、いわゆる『ちゃんぽん』になれていた私にとって、その麺の舌触りや味付けは新鮮な驚きだった。あわせて、料金を前払いし、プラスチックのプレートを渡されるというそれまで見たこともないシステムにも驚いた。そして、それはのちに、注文した順番がナンバーリングされている紙製の食券へと変わり、今は通信システムを使った端末処理へと進化を遂げている。

 マニュアル化された調理にサービス。こういったシステムは今では決して珍しいものではないが、当時の外食産業の中で、子供心にも新鮮に見えた。

 驚いたものがもう一つあった。
 テーブル毎に、社長室行きと書かれた「アンケート葉書」が置いてあったことである。

 そこには、麺は硬くなかったかとか、スープがどうだったか、という質問が事細かに記されていた。さらに、驚いたのは「店員のサービスはどうでしたか?」という項目があったことだった。
 つまり言って見れば、会社で一番偉い社長宛に目の前の店員の悪口を書けってことである。勿論、誉め言葉もあろうが、この場合、その多くは『告げ口をすること』だと推察された。こういう形で、お客さんに監視され、プレッシャーをかけられる店員さんって気の毒だなァ、と思ったりしたものだ。
 アンケートに、名指しで店員さんのサービスが悪かったとか書いたら、その人は社長からこっぴどく怒られるのかな、などとも心配した。

 その後、『ちゃんめん』は商標の関係で名を変え、今のリンガーハット『長崎ちゃんぽん』となって、全国チェーン店と大きく成長している。
 このアンケート調査をリンガーハットがどのような形で生かしていったかは勿論、私が知る由もないが、外食サービス産業として、アンケートから得た情報をその後のノウハウとして大きな財産にしていったことは間違いない。
 
 どうだろう。長崎の観光もこのリンガーハットのアンケートシステムを採用してみては。
 なかなか、この町に住んでいると、訪れるゲストのニーズとか、感想というものが想像できない。
 さらに、長崎でゲストが受けたサービスの質もわからない。今ダメだっとしても、次の改善策に繋がれば良いではないか。
 観光客が訪れるあらゆる場所に、細かい質問項目をまとめたアンケートを設置・手渡しして、ご意見を市長・知事宛にいただいてはどうだろう。返事をくれた人には抽選で、プレゼントなど企画して…。ただし、市長やこの町は、それらの声に真摯に耳を傾け、素早い対応をしなくちゃ意味がないとは思うけど。

 勿論、私が知らないだけで、こんなことはすでに、やられているのかも知れないが、長崎で観光に携わる人にとっては貴重な資料になるのではないだろうか。
 今後、戦略を練る上でのヒントにもなるかもしれない、と勝手に思ったりした。

 長くなりました。ごめんなさい。

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