殺生 ということ
 長崎在住の芥川賞作家、生来有一さんに話を聞く機会を得た。
氏の芥川賞候補作品は全作品読破し、インタビューの場所は浦上天主堂と決め、質問内容も事前に固めて頭に入れ、インタビューに臨んだ。

 きっと自分でも、緊張していたんだと思う。

 青来さんは、実に、細やかに視線の動く方で、周りのさまざまなことに気が行くようでした。何か、私の心理などを見透かし、観察している様にも見えます。(私の自意識過剰でしょうけど…)
 インタビューのなかでも触れていらっしゃいましたが、最近、昆虫や動物・草花の「生」や「死」、「匂い」などにも注視してしまうことが多いそうです。

 話を聞いている途中でも、カメラマンがカメラを三脚に固定する音に、鋭く反応し、さっと、視線が動きます。

 で、そんな事を感じていながら――、
 収録が夜の野外であったため、ライトに虫がたかりました。当然、照らされている私達にも羽蟻が集まります。
 丁度、話のテーマが「死」に差しかかった時、私は思わず、膝の上に載せていた自分のノートに止った羽蟻をプチッと潰してしまったのです。
 ハッとなりました。
 青来さんを見ると、虫を潰した私の指先を見ている。

 『死の話を聞いている最中に、しかも教会で私が無意識に殺生をしてしまった』。
 思わず冷や汗が出た瞬間でした。