ゲノムで未来予想図 ということ
 ヒトゲノムを解析している長崎大学の教授を取材させていただいた。
 現在、国内でもトップクラスの研究をされている先生だが、私のような素人にも、わかりやすく、最新の遺伝子工学の一端を紐解いてくださった。

 ゲノム研究は、月から地球を眺めて、(姿は直接見えないのだけれど)そこにいる60億人全てを特定するような作業なのだとおっしゃってました。

 大きな視点で見たとき、一つ一つには意味は持たないが、それが幾つかの集団にまとまると、それが人体の中で『いろいろな生物としての意味』を持ってくる。
 その集団が、遺伝子といわれるもので、現在行われている研究の一つが、「この集団(塩基対の配列)」が「こんな事を決めている」という、生命現象の設計図を明らかにしようという作業です。(多分。私の理解では。)

 で、全ての病気は「遺伝子」と関連があるのだそうです。ですから、病気の要因となる遺伝子が特定されれば、「予防医学」に革命的な変化が起こるといわれています。

 例えば、「糖尿病にかかりやすい人」「癌になりやすい人」などの検査が「遺伝子」を解析することで可能になります。
 糖尿病にかかりやすいという遺伝子を持つ人は、糖分を押さえた食生活につとめるとか、運動を欠かさないようにする。病気の発生を予見して、発症しにくい生活環境を作ってやることで、より確率の高い『予防』することができるようになります。
 さらに、個々の遺伝子に応じた薬を処方出来る様になり、副作用などの影響が出にくい医療が可能になるというのです。このような医療はより個別に具体的に行われることから「オーダーメイド医療」とも言われるそうです。
 で、それがこの10年以内に現実になるといわれています。

 凄いな〜、と思います。
 でも、でもですよ。
 自分のゲノム解析をしてもらって、病気の危険度を知った時、人は冷静にいることが出来るのだろうか、とも思うのです。
 一種、「生物としての」自己の未来を、これで知る訳じゃないですか。「遺伝子情報によると、若い時期に「癌」が発生する確率が90%」なんて診断がでたとき、生き方そのものが変わるような気がするんですよ。

 結婚する時や就職する時に、相手から「『遺伝子情報』を提出してくれ」、と言われたらどうします?
 こんな極秘にしたい「個人情報」ってないですよ。

 さらに、生命保険に入る時の契約書に、「遺伝的に、あなたが癌にかかる確率は?」なんて質問項目があったとしたら?
 医療保険が、「遺伝的要因」で負担金が異なるようなシステムに変えられたら?

 今、ざっと想像してもいろいろな局面で社会システムそのものがガラリと変わることもありえるのではないでしょうか?

 突き進む遺伝子研究そのものが、いいのか悪いのか、今の私には判断できませんし、日夜苦労して研究している方をどうこう言うつもりは毛頭ありませんが、この問題は、実に身近なところで、大きな影響を持つことだけは確かなようです。