濡れ衣 ということ
 先週の金曜日、本番が終わり、スタジオを出ると、報道部でデスクが電話に応対している。

 OAを終え、スタジオを出る時は緊張する。

 ニュース番組の場合、名称や事実と異なる事を伝えることは許されません。さらに内容次第では、利害関係が発生することもあって、「苦情」「間違いの指摘」の電話が入るということはよくあることなのです。勿論、逆の良く出来ていた、というお褒めの場合もあります。(こちらは滅多にありませんが…)

 そんな時は、電話を取っている人の表情や言葉の断片から、それが「苦情」なのか「お褒めの言葉」・「問い合わせ」なのか咄嗟に判断します。
 で、苦情のようであれば「何か間違えたかな」などと当日の内容をスッと振りかえる癖がつきました。

 その電話は、明らかに苦情のようでした。スイマセン、という声が聞こえたから。

 その後、私一人が呼ばれる。私は何をしでかしたんだろう。番組を一気に反芻するが、まずいことを言った記憶はない。

「林田君、会社の近くの一方通行の道を、車で逆走した?」
「えっ?」
「今の電話、近所の女性なんだけど、林田君が猛スピードで、一方通行の道を、逆走してた、注意して欲しい、っていうのよ。ニュース出てる人がそれじゃマズイでしょって。そんな事するような人間じゃないけどっては言ったんだけど…。」

 勿論、そんな事した記憶など微塵もない。

「そんなこと、する訳ないじゃないですか!」
「だよねぇ。その人が言うには、一方通行の道を、逆走してた車がいたから、近所の主婦と一緒に、その車を止めて注意したと。そしたらドライバーは、テレビに出てる人によく似てる人だと。車を制止したら、相手が窓を開けた。顔を見たらNBCの林田さんだと。で、もう一度確認しようと思って、今日ニュース見たら、やっぱりこの人に違いないと。ニュース読む人が、そんな違反しちゃいけないでしょって、相手はいうのよ。そこまで言われたら、ひょっとしたらって思ったもんだから…。」
「で、相手には何て言ったんですか?」
「そこまで、言われるもんだから、そんな事するような人間じゃないんで多分違うとは思いますけど、もしも、確認してそうだとしたら、注意しときます、って答えた。」
「えー、そんな…。嫌ですよ。僕。その誤解、解きたいから、電話しますよ。相手の電話番号は?」
「言わずに、切っちゃったのよねぇ。」
「えーっ!それじゃぁ、疑われっぱなしィ?」

 ご丁寧に、電話をかけて来た方、何回も確認された様ですが、決して、その人は私ではありません。100%濡れ衣です。私はあなたの誤解を解こうにも、なす術がありません。

 あなたは、このような電話をかけることで、すっきりとなさったのでしょうが、私は非常に、「寝起き」の悪い状態になっております。至急ご連絡下さい。

 もう一度申しあげますが、私は決して一方通行を逆送するようなことはしてません。
 勝手に誤解されて、悪いヤツだ、と思われているのは非常にやるせない気分です。正直、こんな仕事をしている性格上、普段から、結構、色んな面で気を使っているのです。(いちいち書きませんが…)
 自分自身、極めて、「公人」に近い「私人」であると認識して律しているつもりです。だからといって、会社的にも、社会的にも、いい扱いを受けたという記憶はほとんどありませんが…。

 そこんとこ、わかってくださいな。