クレーンゲーム ということ
 娘と二人、ゲームセンターに行った。

 最近の複合商業施設には、必ずと言っていいほど「ゲームコーナー」が併設されている。
 もちろん、カップルや中高校生が楽しく遊べるアミューズメント空間なのだろうが、実は、お父さん、お母さんがショッピングにはまっている間、子供をここで、遊ばせておけば、それなりに時間が確保できるからではないかと想像している。
 その証拠に、若いカップルでは決して乗らない「アンパンマン」の乗り物があったりする。
 いわば、自分たちが子供頃、デパートの屋上が楽しかったのと同じ感覚なのでしょう。
 で、最近、母親が、ショッピングを始めると、娘は私の手をとり、「ゲームコーナー」に引っ張っていくことをおぼえた。
 ”どこに「ゲームコーナー」があるか”良く鼻が利く。
 中でも、最近、特にお気に入りなのが、クレーンゲーム。ケースの中にびっしり詰まった「人形」を見るのが楽しいらしい。
 彼女はまだ、クレーンを使った状態を見たことがなく、人形の詰まった「ショーケース」という認識なのだ。

 この日、娘は「くまのプーさん」の人形が詰まった「クレーンゲーム」の前から動こうとしない。
 「プーさん」は、最近、彼女のお気に入りのキャラクターの一つ。私も、そんな姿を見て、「お父さん、やってみようか」とつい、言ってしまった。

 一回、200円。こんな責任を感じてクレーンゲームをやるのは初めてだ。――挑戦。
 クレーンはプーさん目掛けて垂直降下。見事掴む!
何と、一回の挑戦で人形ゲットか!?と思った瞬間、プーさんは出口を直前にして、あえなく落下。

 「あー、父さん、掴んだのにねぇ。だめやった。」
 「……。」
 娘は、父が何を残念がっているのか、よくわかっていない様子で、まだ、人形を見つめている。

 「も、一回してみようか?」
 2回目の挑戦。
 すると、今度はどうだ、2本の爪が見事、プーさんをがっちりと握り締め、商品取り出し口まで運んで行く。
 みるみる、娘の顔が興奮していくのがわかる。商品ゲット!思わず、自慢してしまう父。

 「とれたよ。じおん。とーさんスゴカろぉ。」

 賛辞を贈って欲しい親に対して、「2才半」の娘にそんなボキャブラリーがあろうはずもない。
「よっ!オヤジ、凄いね、このぉ日本一」などとは、2才半の幼児は言わないのである。
 ただただ、無言。興奮して顔だけが真っ赤になっている。
 人形をハイと渡してやると、プーさんをギュー抱きしめ、うっとりと嬉しそうな表情をしている。

 図に乗った私は、次の日も、別のクレーンゲームに挑戦した。しかし、全くダメ。
 嬉しい表情が見たいという気持ちもあるが、そう易々と取れるものではないというのを改めて実感する。まして、親がゲームに意地になる姿もあまり見せたくはない。

 いろいろ、子供からねだられて困るモノはあろうが、「クレーンゲーム」の中の人形だけは勘弁願いたい、と思った。とりたくてもとれないのだから…。
 まぁ、いい。人生には、手にしたくても、手に入れることが出来ないモノだらけだということが、娘にもおぼろげながら、きっと分かっただろう。