2000年5月25日
トンネルの名前に『女へん』や『サンズイ』『ニスイ』の漢字を使ったものが少ないってご存知ですか?
今、『神の国』発言が随分と問題になってます。
当たり前でしょう。森さん個人がどう考えてるかは、他人に関知される筋合いはないけれど、公人の中の公人たる一国の首相がこういう発言をすべきじゃないですよ。マスコミは正しく伝えていない…などと言うけれど、一連の発言を見れば、やっぱり『それ』以外に取り様がないもの。
いや、違うんです。今日はその話じゃないんです。トンネルにまつわる神様の話なんです…。
今日取材で、建設中の出島バイパスの『オランダ坂トンネル(仮称)』に入り、『切り羽(最先端部)』を見せてもらいました。
今月中には、およそ3`のうちの半分を掘り進むそうです。
私、実は、工学部土木工学科出身なんです。初めて切り羽に行ったのも、学生時代の研修でした。(今から15年以上前です) その頃聞いた話を――。
山の神って『男性』『女性』どちらかご存知ですか。
古くから(といってもいつぐらいからは知りませんが)『女性』といわれています。つまり女神。
で、作業に当っている人は建設中にトンネル(坑道)に女性が入る事を嫌います。理由は『山の神様が焼きもちを焼くから』というものです。
このため、かつて、マスコミの取材で、女性記者が坑道に入ることでもめた事も現実にありますし、『女性が入ってくるんなら、俺はこの仕事を辞めさせてもらう』と本気で怒る作業員もいたようです。
その他にも、作業している人達は様々な縁起を担ぎます。
例えば、”朝、お茶漬けを食べない。”
これは、御飯という『山』が『水(お茶)』で崩れていくからです。今も昔も、掘削途中の出水は大変な事ですから、これはイメージでお分かりになるでしょう。
それで、冒頭書いた通り、名前にも、『女へん』や『サンズイ』『ニスイ』の漢字はなるべく使わないようにしているのです。
あれ?長崎自動車道の『嬉野トンネル』は?
今度通った時に見てみてください。『うれしのトンネル』とひらがなで書いてあります。
で、この話の背景として分かって欲しいのは、作業をしている人達はかつて、暗い坑道で命を賭けて作業をしていた時代があったということです。
その人達が山の神を信じ、敬い、出水を恐れ、様々な縁起を担ぐのも当然といえば、当然の時代がかつてあった訳です。それをただの迷信と否定することは私には出来ませんし、言うつもりもありません。
しかし、念を押しておきたいのは、これらの内容は、一昔前のお話。
今日、女性だからと言う理由だけで、トンネル工事現場に入らせない、ということは、まずありません。
今は、地質・地下水の有無などの事前調査や、トンネル掘削の様々な工法も発達し、安全性は飛躍的に向上しました。『女の入ったけん、事故の起こった』と言う人もまずいないでしょう。女性から『何で入れないんだ!』っていわれたとき『神様が…』では納得がいかないでしょう。
勿論、現場の見学会にも女性が参加できますし、むしろ女性の方が熱心に参加されています。トンネルの名前も最近は『サンズイ』『ニスイ』を使ったものも時々見かけます。
どうか、閉鎖的だとか、性差別とか怒らないで下さい。こういう時代背景もあるのです。
この問題で、大相撲での土俵上での女性による表彰の問題と一緒にして欲しくないんです。『穢れるから』とか、『昔からそうしてきた』と言う理由とはちょっとニュアンスが違うと思うンです。
んー納得いかない女性もいらっしゃるかもしれませんが、一人の土木出身アナとして一言申し上げました。