2004年06月06日

旬の落語

さすがプロ。

おそらく今日の観客一同唸ったと思う。
いや、少なくとも私は感心して参ったと感じた。

長崎もってこ〜い落語の会に出かけた。
今売り出し中の若手や、席亭、前田さんの目にかなった実力派の噺家さんが、長崎で魅せてくれる落語の会。

今回は、柳家さん喬師と惣領弟子の喬太郎師匠との親子会。
さん喬師の話術の奥深さにももちろん唸ったのだが、喬太郎師匠の新作にたまげた。

『年金の未納問題』を扱った新作なのだ。
単純に政治家らが未納であった事実だけを皮肉るだけではなく、国民の4割が払っていないことに対する作品。
しかも、”してもいない借金”で脅す「取り立て詐欺」の問題を絡めながらの展開。
恐れ入った。

視点が実にビビットだったし、なにより、まだ、話題としてはホカホカ。つまり旬だということ。
こういった落語の筋立ては、得てして、苦労して完成したときには旬を過ぎていると言う場合が多い。
短く漫才や、コントなどで時事問題を取り入れることはあろうが、きちんとした筋立てになる落語の場合極めて珍しいと思う。
変な言い方だが、年金の問題も、しばらくすれば皆の関心事ではなくなる。そのときにこの話しの旬は過ぎ、「噺」として高座にかけづらい持ちネタの筈なのだ。

食べ物で喩えるならば、旬を過ぎたら腐ってしまって食べられない、だけど新鮮なうちは、他の何よりもうまいという一品。
これこそまさに「生の高座」の王道だし、魅力だと思う。

いや〜、喬太郎師匠。最高でした。

(追記)
その後、席亭、前田さんの「ヨタロー通信」をいただく。
このネタは「国民ヤミ年金」とのこと。
今年の4月に喬太郎師が創作したそうで、「今しかできない」ので最近、高座にかけることが多いそうだ。