特集エッセイ(第4回)

演奏会
その3

フレーベル少年合唱団 渡辺月彡子

OB NEWS用の原稿を、演奏会前の多忙を理由に1回Passしたら、年が明けるどころか春になってしまった。これではすぐに夏そして秋。アアー、また演奏会がやってくる...。

演奏会と云えば先日思わず噴き出してしまった、インターネットにある当団紹介の私設ホームページを読んでのこと。昔は小冊子で送られてきた当団関連のこの種の記事を、その当時から私は愛読している。非常に鋭く、時にユニークな視点から当団を見据えてくれていて、私にとっては大いに参考になるからだ。そして今回のように文字通り抱腹絶倒、愉快にもなる。

私にとって、演奏会は、面白い。きつくて哀しくて、そしてやっぱり面白い。体力と気力と知力のすべてを使って勝負する、そこが面白い。加えて今度のような指摘があると私は実に愉快になり、演奏会の持つ魅力にまたもや取りつかれる、きつくて哀しくて、終わった後には打ちのめされてしまうだけと言うのに...。アアー、今年もまた直ぐに演奏会がやって来る...。

昨年秋の演奏会を、先のホームページ氏は「フレーベルとしては破格の、真っ暗闇から会が始まった」「イキナリの演出なのである」と誉めて(たぶん誉めて...)くださる。これがおかしかったのだ。

実は、今にして云えることだがあれは演出などとんでもない、私はあの時、ただただ慌てふためいていたのだ。実は、本ベルを入れ、幕開きのキューを出そうとした正にその時、舞台からピアノの吉田先生が降りていらっしゃる、そしてここが吉田先生のとても偉いところなのだが──、ゆったりとおっしゃった「あのー、荒井先生(ヴァイオリン)がまだなのですけれど...。」

第39回定期演奏会は、ピアノとヴァイオリンで幕開けする...はずだった。つまり私は、舞台準備が整わないうちに、居るべき人がまだ板につく前に本ベル→開演アナウンスを流し、寸でのところで幕まで開ける間際だったのだ。ここからは演出と云えば演出、但し苦肉の策の演出で、結果は幕を開けず真っ暗闇にピアノのみを流すという、ご来場の皆様には既にお分かりのあの運びとなったのである。あの時流した冷や汗の、その量計り知れず...。

フレーベルの演奏会(のみならず大方の演奏会)もかつてはシンプルに、オーソドックスに、いわゆるクラシックスタイルで開いてきた。が、ここ暫く私達スタッフは既にご鑑賞頂いている通り何やら雑多な演出を施した形式に変えてきている。その最大の理由は、私自身にある。あのシンプルに飽きてきたのだ。幸い現主任指揮者の手島明子・手島英 両先生も同じ思い。以来私達スタッフは毎年演奏会=2時間を如何に飽きず、楽しく過ごせるかに勝負をかけることとなった、これがその後、どんなにきつく厳しい課題となって私達自身の首を絞めるか予想だにせず...。

例年、私達はその年の演奏会開催前後から翌年の演奏会を考える。大まかな構成・選曲を踏まえて練習が始まり、その年の団員年齢や人数の割合などから歌うメンバーが確定し、併せて演出プランも絞り込まれていく。最大の狙いは、弱冠10歳の合唱レベルを、如何に大人向きに仕上げるか。お客様に「たかが子供の演奏会」を「楽しかった」に変えるため、あの手この手の模索の日が続く。かくして私達は、演奏会を徹頭徹尾考えて考え抜く。そうやって練り上げた(つもり)の演奏会、台本通りに進んでくれれば一定の雰囲気は作れる筈なのだが、これがどうしてどうして...。

主役は子供、しかし先のホームページ氏ご指摘通り、当団は今、幼稚園〜小3が7割を占める若年合唱団なればこそ、泣くに泣けない、珍なる出来事は日常茶飯事。なれば演奏会当日に、この椿事の出来しない筈が無い。加えて上記のように大人の私がやらかす予期せぬ大ポカ。まったくもう演奏会はきついのだ。

しかしまた、私は、考える。どうやって並み居るお客様をうならせることが出来るか...。いわばフレーベルの演出は、お客様と私達スタッフとの知恵比べ。絶対負けない、負けたくない──。だから故、先のホームページ氏のご指摘の随所は、勿論、私達スタッフが練りに練り上げた「珠玉のプラン」、ではない、身を切り骨を削り、汗と涙で作り上げた胃潰瘍薬の味すらする、「今年はこれで勝負!」の「賭博士プラン」なのだ。

「切った張った」の世界を地で行く当団の演奏会を、先のホームページ氏のように、丁寧に暖かく見つめて頂けることが、私にはこの上なく嬉しい。(注:くだんのホームページは決して冷たい批判ではない。実に暖かく当団を理解し、私達スタッフの手の内を見つめてくれている。まだの方は是非ご一読を。)

ワンコーラス・ワン場面を私達は考え、作る、今年も来年も。そしてお客様と勝負する、「どうです、子供といえどやるものでしょう!」と、スタッフ自身が威張れる日まで...。

(昨年8月、集団の継続には優れた指導者の継承が不可欠、当団はそれが非常にうまく行っていて、40年の歴史につながる」と書いた。今回はその続きをと思っていたが、ホームページがあんまり面白かったので、ついつい横道へ。昨年8月の続きは、何れ機会があればということでお許しを...。)

現役の昨今
昨年12月弊社発行CD「アンパンマンと歌う楽しい童謡」
2曲レコーディング(2月中旬発売予定)
2月18日(金)「静岡県人会」出演(品川プリンスホテル)
3月末〜4月第42期生団員募集

(2000.2.1)


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