人さらい
目に入れても痛くない愛娘エリシア。
つい先日も可愛い笑顔でこう言った。
「大きくなったらエリシアねーパパのお嫁さんになるのv」
くぅ〜〜〜っ!
これこれ!これなんだよなぁ、娘を持った醍醐味?ってやつぁ
昔から俺は自分の子供は絶対女の子がいいと決めていたからさ。
息子もいいがやっぱり愛する妻によく似た娘は格別だよな。
「エリシアちゃんはパパが一番なんだよねーv」
小さな花嫁候補をひざの上に抱きかかえその面をなおいっそう緩ませた。
「あなたったら・・・・エリシアが年頃になって恋人を連れてきたらどうするの」
だらしなく目じりを下げたそんな俺を見て思い切り呆れた顔をする妻グレイシア。
「誰にもエリシアはやらんぞ」
こぶしを握り締めて俺は即答する。
言っても無駄とばかりにグレイシアは苦笑いした。
その夜────
マースはとんでもない夢を見た。
パパのお嫁さんになるvと言った可愛いエリシアが、年頃の姿でとんでもないことを言ったのだ。
「ごめんね、パパ私この人と結婚したいの」
「お父さん、娘さんは僕が頂いていきます」
爽やかそうな声のシルエットのみの花婿が娘を抱えあげると消えていく。
なんてこったぁ〜〜〜〜〜!!!
俺の大切なエエエエエリシアちゃんがどこの馬の骨ともわからん野郎に
持ってかれるとはっっ!!!
「まっ待てぃっ!!このっこのっ・・・・・人さらいーーーーーーーっ!!」
大声を上げたとたん目が覚めたようだ(笑)
「どうしたの・・・?大丈夫?ずいぶんうなされていたようだけど」
隣で寝ていた妻が心配げな声をかけてくる。
ぼんやりした頭をめぐらせて俺は起き上がった。
「悪い夢でも見た?」
夢・・・・・・・?
夢・・・か・・・・そうか!そうだよな!ああ・・・嫌な夢だ、まったく
しかしちょっと待てよ?最後に叫んだあの言葉どっかで聞いたことがあるような・・・
「どうせエリシアがお嫁に行くときの夢でも見たんでしょう?」
グレイシアの言葉に思い切り驚いた。
なぜわかるんだ?
「どうしてそれを・・・」
「だって『人さらいーっ』って叫んでたわよ。あれあなたが私をもらいにきたときに
私の父に言われた言葉と同じだったわ」
くすくすと笑うグレイシア。
・・・・・・・・そうだ!
あのときグレイシアの親父さんは確かにそういったんだ。
今ならわかる。
あの人の気持ちが。
娘を他の男にさらわれたときの気持ちが。
「どう?娘を嫁にやる気になった?」
にっこりと笑ってこう答えた。
「とんでもない」
理解と納得は違うのである───(笑)
完